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満願成呪の奇夜
第12夜 共闘
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笑うドレッドと、トレックの後ろに無表情で立っていたギルティーネだけだった。



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 時折、ふと世迷言のような疑問を抱く。
 呪獣に恐怖という感情――いや、感情はなくともそれに類似した感覚はあるのだろうか。

 呪獣は自然の摂理から外れた存在だ。
 連中は食事として食らうことはしないが、獲物の殺害手段として人間を喰らうことはある。もしもその特性が無ければ、今頃この大陸の牛や馬などの家畜から野生生物まで、動物は当の昔に絶滅しているだろう。
 なのに、連中は何故か人間だけを積極的に狙い、殺しに来る。
 それは、まるでこの大陸を支配するかのように自然の一部を支配していた我々に真の支配者を思い知らせるかのようでもあり、そして目障りな羽虫を無機質に潰すようでもある。高い知能も言語も持たない呪獣にその真意を問ても、答えは唸り声か咆哮が関の山だろう。

 そもそも、あれは本当に生物なのか。
 殺しても死なず、呪法で止めを刺せば全身が闇に融けて肉片の一つも残さない。
 寿命はあるのか、生殖行動を行って増えているのか、どうして生物には必要なはずの光を浴びると衰弱するのか。文明を発展させてきた大陸の民の学者でさえ、その問いに明確に回答できる人間はいない。
 大陸の民が呪われてから2000年、呪法教会が呪獣を撃滅する術を得てから1000年、これほどの時が流れたにもかかわらず、答えは一向に闇の中に沈んで見えてこない。

 いや、あるいは答えなど無いのかもしれない。
 闇から出でて闇に消える奴等は、夜というどこか我々にとって遠く曖昧な世界にいる存在の影でしかなく、大陸の民はそんな幻影と踊り続けているのかもしれない。実体がなければ真実もなく、ただ光と相容れないという事実だけで構成された『敵』。

 しかし、もしも呪獣に恐怖という感覚があるのだとすれば、それは大陸の民にとってもまた恐ろしいことではなかろうか。

 恐怖とは耐えがたいものだ。人にとって夜の闇がそうであるように、呪獣にとっても光が恐ろしく耐えがたいものであるなら――連中は、人類と同じようにその恐怖を克服するための行動を模索し始めるかもしれない。
 嘗て僅かな光にも怯えて身を引いた呪獣たちも、今では短期間ながら光の中に侵入して攻撃を加えるのが当たり前になりつつある。もしそれが、呪獣が数百年の間にそのように恐怖を克服する術を模索した結果なのだとしたら。もし、上位種がその試行錯誤の結果の一つだったとしたら。

 対抗手段が、必要だ。

「経過は如何様かな?」
『………老人の余計な茶々が入り、予定に少々狂いが出ております。上位種との戦闘のリスクは、計画の現段階では性急に過ぎる。こちらとしても失敗すれば有限な時間が更に無駄に浪費される結果となる為、愉快
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