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満願成呪の奇夜
第12夜 共闘
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を解除した。どうして縄が燃えないのか、その答えにトレックは心当たりがあった。

「あれは……まさか灯薪と同じ成分で作られているのか?」
「そうさ。燃焼が長時間続く灯薪は強度の問題から武器に使われることは少ないが、縄や鞭のような形状にすればああやった使い方も出来る。もっとも、『樹』の術を得意とする呪法師は総じて『熱』の呪法を苦手としているし、『熱』の術を得意とする場合は縄の精製や修理がまるで出来ない。好んで使う呪法師は少ないだろうね」
「………敵を縛り、縄で殺す、か」

 結局、ガルドはステディとドレッドのそれぞれ一回ずつの援護だけで5体の呪獣を殲滅して見せた。夜の戦いでは使えないと思われていた『樹』の呪法の可能性に関心した俺は、自分でも出来ないだろうかと考える。
 メインで使えなくとも、いざという時の引き出しは多くて困ることはない筈だ。

「ええと、縄を作るには………」

 ガルドにいきなり予備の縄をくれなどと厚かましいことは言えない。法衣の上着の洒落だけで必要性がない生地を触り、呪法対象として設定。昔に講義で習ったことのある灯薪生成の基礎理論を思い出しながらうろ覚えの呪法式を頭の中で組む。

「『(テヘーラ)』」
「むっ………何をする気だ?」

 装飾が濁った光で生地が分解されるように解けてゆき、掌に1m程度の長さの細い紐が出来上がった。ガルドのものと比べると材料が少なかったせいで遙かに細い。今度は必要ない『鉄』の装飾を呪法で紐の先端につけ、重りの代わりとする。編み込みに問題がないかと張ってみると、ビィン、と音を立てた。
 最後に組み込んだうろ覚えの『灯薪』の呪法式と材質変化の合成が上手くいっているかを確かめるため、ペトロ・カンテラを目の前に降ろして紐に火をつけてみる。縄は小さく燃えながらも不完全燃焼の煙を出さず、紐の強度を保っている。しかし暫く見つめていると紐が段々くすみ始めた。
 理論は出来たが洗練されてはいないようだ。それに、これを使った戦闘方法のノウハウがない今、紐が役に立つことはそうそうないだろう。単純に使い慣れていない上にガルドの武器の劣化品だ。トレックは紐を軽く丸めてポケットに放り込んだ。


 3属性を操るだけでなく、相性の悪い『熱』と『樹』の両方を扱って簡易呪法具を作成し、コントロールする――その行為がどれだけ出鱈目な真似なのかを、トレックは理解していない。
 ガルドの武器が、ガルドとドレッドのアイデアを基に呪法具製造を最も得意とする学徒に伝え、形になるまで1か月を要したことも。そもそも大半の『欠落』持ちは呪法の才覚と呪法具の才覚が分離している場合が多く、その学徒も数人の友人に手伝ってもらってそれを作りだしたことも。
 彼は、知らない。

 彼の為した所業を見ていたのは、興味深そうに薄く
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