第三話 幸福と孤独その五
[8]前話 [2]次話
「どちらもな、しかし」
「その二つばかりでは」
「よくない、遊びは否定するものではない」
決して、というのだ。
「遊びからも学べるのだ」
「そうです、様々な遊びから」
「人として大事なことをな」
「人とも交わりますし」
「あの娘は人と交わろうとしない」
「そのことが問題です」
大公も言う、このことを。
「マイラ様にとって」
「そうだな、どうしたものか」
「何とかマイラ様に学問と祈祷以外のことも知って欲しいですが」
「自らそうだとな」
交わろうとせず遊びに近寄ろうとしないならというのだ。
「難しい」
「はい、どうしても」
「せめて三人と共にいて欲しいが」
「それもです」
「全くだな」
「陛下のご息女だというのに」
「側室の娘ということはだ」
王は苦い顔で言った。
「そんなことはどうでもいいことなのだ」
「大したことではないですね」
「全くだ」
それこそというのだ。
「気にすることではないのだ」
「ですがマイラ様は」
「周りの言葉も聞いてだ」
「育ってこられています」
幼い、いや物心つく前からだ。周りの側室の娘という言葉を聞いてきたというのだ。この言葉をその耳に直接。
「ですから」
「難しいか」
「はい、むしろ私の娘よりも」
マリアよりもというのだ。
「意識しています」
「その様だな、マリアはだ」
王も彼女のことを話す。
「そなたの娘、正室との間のな」
「正室ですか」
「しかも王家とつながる公爵家の娘だった」
「血筋が高貴である」
「そうだ、それ故にだ」
「マリアに対してもですか」
「劣等感を抱いているのだ」
大公にこのことを話すのだった。
「強くな」
「そうなのですね」
「側室の子の宿命か」
王は顔を上げてこうも言った。
「これは」
「側室の子であることを強く意識する」
「劣等感を抱いてな」
そのうえでというのだ。
「そうしたものか」
「正室の子ではない」
「それは重荷か」
「我等が思っている様に」
マイラ、そして彼女以外の側室即ち妾の子はというのだ。
「現に王位継承権を与えられない国もありますね」
「我が国もそうだった時期があるな」
「洗礼が許されない場合もありますし」
このことは教会の判断による、聖職者の考えで側室の子は私生児とみなされ洗礼が与えられない。即ち社会的に認められないのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ