2部分:第一幕その二
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になって)ヴェネツィアか」
弟に対してその顔で問う。
カヴァラドゥッシ「そうだけれど。何かまずいのかな」
伯爵 「あの執政殿のお気に入りだったな」
カヴァラドゥッシ「ボナパルトのことだね」
伯爵 「そうだ、一つ言っておく」
真面目な顔で弟に対して述べる。
伯爵 「あの男が求めているのは己の名誉だけだ。エジプトで何をしたのか覚えているな」
カヴァラドゥッシ「大勢の兵士を見捨ててね」
伯爵 「そうだ、あの男は油断できないぞ、いいな」
カヴァラドゥッシ「兄さんはそう見ているんだね」
伯爵 「多くの戦場でフランス軍と戦ってきた」
真顔で弟にそう語る。
伯爵 「だからわかる。今もマレンゴから帰って来た」
カヴァラドゥッシ「そうだったんだ」
伯爵 「ああ。陛下にお伝えする為にここに一旦来たがすぐに戦場に戻る」
カヴァラドゥッシ「僕の為に来てくれたんだね、ここには」
伯爵 「二人きりの兄弟じゃないか」
穏やかな顔になって述べる。
伯爵 「それでどうして放っておける。特にスカルピアはな」
カヴァラドゥッシ「あのシチリアの山賊あがりの評判はどうだい?」
伯爵 「陛下は信任しておられる」
忌々しげな顔でそう述べる。
伯爵 「もっとも。あの女好きと袖の下に弱いのは好まれておられぬがな」
カヴァラドゥッシ「当然だね」
その言葉にはあらためて頷く。
カヴァラドゥッシ「あいつは粗野で卑劣な奴だ。どうしてあんな奴を使うのか」
伯爵 「毒を以って毒を制すということだ」
カヴァラドゥッシ「(シニカルに笑って)毒、ね」
伯爵 「ナポリから見れば御前達はそうなる。オーストリアからもな」
カヴァラドゥッシ「それは兄さんも同じかな」
伯爵 「少なくとも好きではない」
弟の顔をじっと見て言う。
伯爵 「しかし御前は弟だからな。だから」
カヴァラドゥッシ「悪いね、本当に」
伯爵 「いい。それでトスカだが」
カヴァラドゥッシ「彼女がどうかしたのかい?」
伯爵 「噂には聞いているが。そんなに凄いのか」
カヴァラドゥッシ「(誇らしげな顔になって)歌だけじゃないからね、容姿も」
伯爵 「生まれはヴェローナの羊飼いの家だったと聞いている。両親を流行り病で亡くして修道院に引き取られたのだったな、確か」
カヴァラドゥッシ「うん、そうだよ」
兄の言葉に頷く。
カヴァラドゥッシ「そこで歌声を注目されてね、それで」
伯爵 「作曲家のチマローザに注目されて彼に声をかけられてだったな」
カヴァラドゥッシ「彼はかなり強引に修道院と揉めてね
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