第百十話
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という事実。とはいえ本人からそれは聞いた話であり、シリカはそれがどうしたとばかりに聞き返した。一瞬だけグウェンは目をパチクリとさせた後、クルリと踊るように回ってドアに寄りかかった。
「……でも確かに、あの子には殺人ギルドの血が流れてるの。だから私たちと一瞬に来たんだから」
……彼女の言った言葉が真実であるのならば、ルクスがここではなく向こうにいる。その事実がある限り、この場で何を言おうがこちらの負け犬の遠吠えだ。それが分かった俺たちが押し黙るのを見て、グウェンは満足げに微笑んだ。
「これからこの世界は巻き戻る。私とルクスによって、ね」
――随分と長居しちゃったけど、とグウェンの言葉は続いて。
「要するに、ルクスのことはもう諦めなさい。あの子は最初から、私たちの仲間なんだから……それだけよ」
「……本当に」
俺たちに背を向けてリズベット武具店出張所を後にしようとするグウェンに、リズはボソリと呟いた。最後に言い残す言葉が気になったのか、首だけクルリとリズの方に向けて立ち止まった。
「本当にルクスがあんたたちのところにいるなら、伝えときなさい。ぶん殴って連れ戻してやるってね」
「ええ。それが最後の会話ね」
口をつり上げて笑うグウェンはそう言い残すと、リズベット武具店出張所の扉を開け閉めすると、この場からドアが閉まる音とともにいなくなった。そのあとの店内には静寂が漂っており、いたたまれない空気が流れていた。
「ルクスが……あいつらの仲間になってるなんて、嘘……だよね?」
そして沈黙を破ったのは、絞り出したようなユウキの声だった。誰に問われたかも分からないその問いに、答えを返せる者がいるわけもなく。ただ、そうしているのみしか出来ずに――
「……何言ってるんだ、ユウキ」
――いることはなく。顔を伏せて泣き出しそうなユウキに、不自然な程にいつも通りに問いを返した。カウンターの奥に座った俺から、そんな答えが返ってくるとは思っていなかったのか、ユウキはキョトンとした表情で首を傾げていた。
「えっ――むぎゅ!?」
「ショウキの言う通り! なーに言ってんのよ、ユウキ!」
ユウキがこちらに聞き返してくるより早く、近くに立っていたリズが彼女の頬を無理やり引っ張った。もちろんリズも先程までのような、怒りを剥き出しにしたような表情ではなく、無理やりユウキの表情を笑みに変えていく。
「り、りふ、ひゃめてってふぁ!」
「ここかー! ここがええのかー!」
ユウキの恐らくは制止の言葉を聞こうとはせずに、まるでトリモチでもこねるようにリズはユウキの頬を引っ張っていく。ほらほら、笑いなさいよ――と言いながらも、本人が一番楽しそうにするリズに対して、そろそろ止めておけ
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