第百十話
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問の声によって、信じがたい言葉が二度も語られた。試しにメールシステムを起動して、ルクスがインしているか確認してみると――確かに今、この世界にルクスはいる。ただし肝心の、こちらから送っていたメールが返ってきている様子は……ない。
「分かったでしょ? ルクスはもうあなたたちじゃなく、私たちの友達なの」
「だから、ルクスはそんな人じゃ――」
「――だから、ルクスのことを、あなたはどれだけ知ってるの?」
「――――ッ」
つい数ヶ月前に知り合ったばかりのユウキの叫びは、楽しそうにクスクスと笑うグウェンの言葉にかき消された。何も言い返すことが出来なくなったユウキの代わりに、まるで場違いなように手を挙げる。
「それで……何をしようとしてるんだ?」
「簡単な話よ。ここを昔のアインクラッドに戻したいだけ」
「昔の……?」
よくぞ聞いてくれました――とばかりに、グウェンは嬉々として話しだした。その彼女が言った『昔のアインクラッド』を知っているこちらは、まるで意味が分からず揃って疑問符を浮かべていた。そんな俺たちの反応が嬉しいように、グウェンは太ももに仕込んだホルスターから、クナイを取り出して手のひらでクルクルと回す。
「こっちの世界のものは、みーんな脆くて壊れやすい。だったら、みんな好き勝手やって壊せばいいのに」
実演のように手のひらで回していたクナイをへし折り、グウェンの手の中でポリゴン片と化して消えていく。この世界から消滅する証と同義である、そのポリゴン片をうっとりと眺めながら、グウェンはさらに言葉を続けていった。
「せっかくなら楽しくやりたいじゃない。みんなが現実みたいに生きてた、あの浮遊城アインクラッドみたいに!」
「あたしたちがいたあの世界は、そんな世界じゃない!」
――グウェンが熱っぽく語る最中、黙って聞いていたリズが、店を震わせるような声で叫んだ。俺たちはもちろん、熱弁していたグウェンすら、その語りを止めるほどに。自身の手を自壊させるほどに握り締めたリズに、つい言葉を失ってしまう。
「そりゃあ辛かったしもう死んでも行きたくないけど、みんなで協力して生き延びたあの世界を、あんただけが勝手に語るんじゃないわよ!」
「リズ……」
「……なに。あんたもSAO帰還者なわけ?」
しばしリズの剣幕に威圧されていたグウェンだったが、すぐさま嘲笑するような表情に変わる。どちらも一瞬後には殴りかかりそうな、そんな気配と空気の最中、グウェンは指をリズの口元に向ける。
「だったら知ってるでしょう? あの《笑う棺桶》のこと。……ルクスのこと」
「だから何なんですか!」
かの殺人ギルドである《笑う棺桶》に、人は殺めていないとはいえ、ルクスが在籍していた
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