暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
列車の行方は誰も知らない
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冗談ではない。嗜虐趣味のようなものでもない。

これが、目的。

これは過程であり、手順であり、工程の中の一つなだけであり、そしてその計画書の中に失敗という文字はない、ということを。

無言で、少女は力なく首を振る。

だが男はその行動をまるっきり無視し、少女の腕を掴み、無理矢理照準を合わせていく。

そして、そこここに至ってやっと状況を理解したのだろう。

両親の顔が引き攣る。

必死に首を振り、口に噛ませられ、手足を縛る布越しに抵抗を表す。だがそれも、思いっきり振りかぶられた蹴り一発で消沈した。

呼吸が荒かった。

夜空全てが、自分を見つめている気がした。

己を囲む黒々とした銃口を実の親に向けていると考えると、吐き気がした。

カタカタ、カタカタ、と。

引き金にかけた指が鳴る。

視界が狭窄し、瞳孔が窄まる。

直後。

甲高い音とともに、薬莢が排出された。










びくり、と体を震わせ、駅のベンチで女は眼を醒ました。

駅のホーム。

近代的なデザインと徹底された清掃振り、さらには完璧な温度管理で常に適温に保たれたここを見て、中東だと連想する人はあまりいないかもしれない。

だが石油産油国が名を連ねる中東は、世界の中でもかなり潤っている部類だ。こういう国の衛生面に気を配らせられる程度には懐が広いのだろう。

―――平和だねぇ、数年前までおもッくそ内部紛争繰り返してたのにさ〜ぁ。

『今年度の予算案が可決されました。政府はテロ防止のために来年度からの軍事費を二割増。野党はこれにコメントで――――』

駅に併設されたカフェ。そこに設置されている大型テレビから漏れるニュースキャスターの生真面目な声をおざなりに聞きながら、女性は立ち上がる。

ついでに身の回りを確かめるが、別段盗られたモノなどない。観光名所では往々にしてスリや置き引きが多発するものだが、しかし百戦錬磨の彼らでさえグースカ寝ている彼女には近付きがたいナニカを感じたのかもしれない。

もっとも、昔に比べて圧倒的に改善の道を辿っている治安の良さに通じるかもしれないが。

平和だにゃー、と再度、今度は口の中で呟きながら、女は胸ポケットから携帯端末を取り出し、いじりながらその中に入っているメモアプリを起動させ、記入していたオリジナル暗号をもとにこれからのスケジュールを脳裏に展開する。

ドラ猫一ミリグラム、手羽先五リットル、ミネラルウォーター八光年などなど。画面に出ているものはふざけた内容ばかりだ。

だが彼女はあらかじめ決めておいたそれらに独自の意味を持たせ、そこから具体性を削り出していく。

ふんふんと頷きながら再び端末をポケットに捻じ込む。


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