16部分:第三幕その二
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第三幕その二
トスカ 「これで。どうかしら」
カヴァラドゥッシ「(やはりキョトンとした顔で)この扇がどうかしたのかい?」
トスカ 「この紋章を見ても言えるかしら」
カヴァラドゥッシに扇の紋章を見せる。カヴァラドゥッシはそれを見て述べる。やはり何が何なのかわからない顔で。
カヴァラドゥッシ「アッタヴァンティ侯爵家の紋章か。とするとこれはマルケサのものかな」
トスカ 「そうよ、貴方の浮気相手のね」
カヴァラドゥッシ「浮気相手!?」
その言葉を聞いて急に何かがわかった顔になる。それでトスカに言う。
カヴァラドゥッシ「分かったよ。まあ少し静かにしてくれ」
トスカ 「遂に観念するのね、この浮気者」
カヴァラドゥッシ「今から君に説明するよ。いいかい?」
トスカ 「何をかしら。言い訳ならいいわよ」
カヴァラドゥッシ「ちょっと落ち着いて。それじゃあ気が狂っているみたいだよ」
トスカを宥めようとするが当のトスカは一向に収まらない。
トスカ 「そうよ、私は狂ってるわ。狂っているからこそ卑劣で嘘つきで浮気者で恥知らずの遊び人を愛しているのよ。私からあの女へ、あの女から私へと遊び歩いてその残り香を私の下へ運んで来る図々しい蜜蜂をね。その蜜蜂を心で、身体で、そして血潮で愛している私は狂った花なのよ」
カヴァラドゥッシ「(苦笑いと共に言う)言いたいことはそれだけかい?」
トスカ 「まあ憎たらしい。開き直るつもり!?」
その時トスカは何かを踏む。下を見ると女物の服だった。
トスカ 「こんな物まであるのに!」
その服を手に取り扇と一緒に見せつける。
カヴァラドゥッシ「服だね。じゃあ話が早い。確かにそれもマルケサのものだよ」
トスカ 「やっぱり!」
トスカはその言葉を聞いて更に激昂する。だがカヴァラドゥッシは相変わらず冷静である。
カヴァラドゥッシ「話は最後まで聞いて。これを着ていたのは彼女じゃない」
トスカ 「えっ!?」
今度はトスカがキョトンとした顔を見せてくる。
カヴァラドゥッシ「これを着ていたのは彼女のお兄さんだよ。そこにいるアンジェロッティさ」
トスカ 「アンジェロッティというと」
カヴァラドゥッシ「うん」
トスカ 「夕刻にサン=タンジェロ城を脱獄されたというアンジェロッティ侯爵!?」
トスカはこの時ようやく自分と恋人の他に部屋にいる人物に気がつく。アンジェロッティはトスカが自分の方に顔を向けると一礼する。
トスカ 「それじゃあ」
次第に落ち着きを取り戻してきた。ようやく理解した顔になる。
カヴァラドゥッシ「そうだよ。サン=タンドリア=デッラ=ヴァッレ教会に逃げ
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