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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十六話 やり直し
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 俺はずっと寂しかった。

 支えてくれるものを失って、一人で立っていることすらできないくらいに落ち込んで、苦しくて、悲しくて。

 弱い自分、情けない自分が恥ずかしくて悔しかった。

 だから誰にも話せなかったし、甘えることなんてできなかった。

 もしも雪鳴と柚那が一緒にいたら、甘えられたのか?

 そう思った瞬間、胸の中で張っていた糸がプツンと切れた音がして、それと同時に震えが止まらなくなった。

 呼吸が不安定になるくらい、震え。

 心の底から冷めていく感覚。

 そして瞳から溢れ出る涙。

「黒鐘……」

 そんな俺を雪鳴は、そっと抱きしめてくれた。

「せつ、な……」

「大丈夫。 私も柚那も、ここにいる。 いなくなったりしない」

「……ぁぁっ」

 さっきまで冷たいと感じた雪鳴の身体は、命の温もりを感じさせてくれて……俺の全身を襲った震えや冷えを消し去っていく。

 涙も次第に収まっていき、思考も安定してようやく気づいた。

 俺は五年前からずっと、『寂しさ』を堪えて生きてきて、雪鳴の言葉で堪えきれなくなったんだ。

 優しく、慈愛に満ちた言葉に俺は……五年分の寂しさを抑えきれず、感じてしまった。

 そうならないために強くなろうって思って、ずっと努力してきたのに……。

 だけど今の俺には、一人でこの寂しさを抑える術がなくて、雪鳴に甘えることしかできない。

「ごめん、雪鳴……もう少しだけ、このまま」

「言われなくてもそのつもり」

 淡々と答えた雪鳴は、より一層力を込めて俺を抱きしめる。

 俺も温もりを求めて、安心感を求めて、雪鳴に縋った。

 なんて情けない姿だ。

 冷静に戻ったら、きっと恥ずかしさで死にたくなるだろう。

 誰にも見せたことのない姿を、大事な人に晒している。

 その恥ずかしさを無視して俺は雪鳴の胸に顔をうずめた。

 こうして誰かに甘えるのは、何年ぶりだろうと思い返して……五年前、母さんと姉さんに抱きつかれた時を思い出して、また涙が溢れた。


*****


「お兄ちゃん……泣いてる」

 料理中、ふと気になってお姉ちゃんとお兄ちゃんの方を向くと、お兄ちゃんが涙を流していた。

 それをお姉ちゃんが抱きしめてあげる光景が目に映って、アタシは料理をする手を止めてしまう。

 お兄ちゃんの好き嫌いが分からないから、誰でも好きなカレーを作って、あとは鍋の底に焦げ付かないように注意しながらかき混ぜるだけ。

 もうすぐできると声を掛けようとしても、アタシは介入するタイミングを失っていた。

 グツグツと煮込む音と、換気扇の音が強く響くけど、修練で鍛えているアタシの聴力
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