巻ノ四十五 故郷に戻りその五
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「だからな」
「それがしは、ですか」
「待っておれ」
「それだけでよいのですか」
「こうしたことは家同士が決めること」
武士のそれはというのだ。
「だからじゃ」
「それがしは、ですか」
「待っておればよいのじゃ」
「左様ですか」
「父親同士で決める」
そのそれぞれの家の主達がというのだ。
「そして御主もな」
「父になれば」
「その時にじゃ」
「子の婚姻を決めるのですな」
「そういうものじゃ、わかったな」
「はい」
幸村あは父の言葉に静かに頷いた。
「さすれば」
「そのことをわかっていればよい」
「さすれば」
「では御主が妻を迎え」
「そしてですな」
「御主の家臣達もじゃ」
即ち十勇士達もというのだ。
「妻を迎えることになろう」
「そうなりますか」
「あの者達も武士、武士ならな」
「家を持つものですな」
「だからじゃ」
「十人全てが妻を迎え」
「家を持つのじゃ、そのこともな」
十勇士の婚姻もというのだ。
「わしは進めておる」
「それでは」
「御主の婚姻が済めば」
その時はというのだ。
「あの者達じゃ」
「わかりました」
「そしてその時にはな」
「戦ですか」
「九州でな」
ここで昌幸の目が鋭くなった。
「はじまるぞ」
「そうなりますか」
「島津家の勢いを聞いておるとな」
「九州を全て手中に収める」
「そうなるからじゃ」
「その前にですな」
「関白様は出陣される」
そうなるというのだ。
「ご自身でな」
「そして大軍を率いられ」
「島津家と戦われる」
「では」
「御主達もな」
婚姻してすぐにだが、というのだ。
「よいな」
「はい、戦とならばです」
幸村も確かな声で答える。
「是非共」
「出陣してもらう」
「畏まりました」
「そして戦といってもな」
「戦の場で戦うとはですね」
「それだけが戦ではないな」
「むしろ戦の場以外での戦がです」
幸村はその目を確かなものにさせて父に答えた。
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