13部分:第二幕その六
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第二幕その六
スカルピア 「とにかくカヴァラドゥッシの居場所を突き止めなければならない。知っているとすれば誰か」
さらに思案を突き詰めていく。
スカルピア 「使用人共は誰も知らん。おそらく秘密の隠れ場所にいるな。だとすれば兄のアルトゥーロ=カヴァラドゥッシ伯爵、は無理だな。もうマレンゴへ向かった。それに伯爵に感づかれてはまずい」
一つ配慮をするように杯をここでテーブルの上に置く。
スカルピア 「オーストリア軍きっての将だ。こちらからは手出しが出来ぬ。唯でさえわしが弟をマークしていることに不快を示しているというのに。アンジェロッティに逃げられぬうちに伯爵に気付かれぬ様に。わしの首が飛ぶより速く、か。さてどうしたものか」
扇から目を離し考え込む。ここでふとトスカが目に入った。何やら多くの淑女達と話し込んでいる。
スカルピア 「トスカはあの男の恋人だ。だとすれば奴の隠れ家も知っているやも知れぬ。だがどうすれば」
ここで閃いた顔になる。
スカルピア 「そうだ、トスカは情熱的で直情的な女だ。奴が女にもてるのみいつも焼き餅を焼いていたという。それを使おう。それに」
何かを思い出す顔になる。次第に邪な笑みがその顔に宿っていく。
スカルピア 「あの男が消えればわしのものに出来るかも知れぬ。獲物が多くなるかもな」
顔がドス黒くなる。鉄仮面の様に表情に乏しい顔だがそれが変色していく。
スカルピア 「だがどうするかだ。待てよ」
手にする扇に気付いた。そして何かを思い出した。
スカルピア 「この前見た『オセロー』とかいうイギリスの劇でイヤーゴという男はハンカチを使って事を運んでいたな。それではわしは扇を使うとするか」
再びトスカに目をやる。何も知らずに楽しくお喋りに興じている。
スカルピア 「あの女が嫉妬深ければおそらく一直線にカヴァラドゥッシの下へ行くだろう。嫉妬に狂った女鷹に比べれば警官なぞものの数ではないわ」
笑みを仮面の下に隠しながらトスカに近付いていく。スカルピアを見て淑女達は潮の様に引いていく。
トスカに近寄り手を取る。あえてわざとらしく親しそうに言う。
スカルピア 「トスカさん、一つお話したいことがあります」
トスカ 「何でしょうか?」
スカルピア 「貴女のその美しい手に手錠をかけるのもサン=タンジェロ城に送るのも私の一存でどうにでもなるということをです」
周りの者達はその言葉を聞いて一斉に顔を顰めさせる。だがスカルピアはそれに構わずに言葉を続ける。
トスカ 「私がですか?」
スカルピア 「はい、貴女のそのブレスレット」
ここでトスカの手にあるブレスレットを指摘する。
スカルピア 「ルビーとダイアモンドとサファイア
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