巻ノ四十五 故郷に戻りその四
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「存分に戦って来るのだ、よいな」
「畏まりました」
「そして東国でもな」
「やはりですな」
「御主には働いてもらう」
「ではその時も」
「存分に働いてもらう」
こう幸村に告げた。
「わかったな」
「さすれば」
幸村は父の言葉に頷いた、そしてだった。
彼は暫く父の補佐役として政にあたった、信之のいない間は。
その間彼はそつなく政をこなした、だが。
己の屋敷に戻ってだ、常に十勇士達に言うのだった。
「今日もな」
「至らなかった」
「ご自身を振り返ってですか」
「そう言われるのですか」
「どうもな」
実際にというのだ。
「やはり拙者はな」
「政については」
「至らぬ」
「そうしたところが多い」
「そう申されますか」
「うむ」
こう言うのだった。
「どうもな」
「左様ですか」
「しかし殿もです」
「よくされていますが」
「政も」
「ならよいがな」
幸村は十勇士の言葉にだ、まずは。
少し気を取り直した、だが。
それでもだ、こうも言ったのだった。
「やはり向き不向きかのう」
「殿は政はですか」
「大殿、若殿と比べて」
「どうしてもですか」
「そう言われるのですな」
「父上の助けになっているか」
こうも言うのだった。
「果たして」
「それは大丈夫かと」
「大殿は何も言われませぬ」
「こうした時に大殿はすぐ言われる方ですが」
「それがないですから」
だからというのだ。
「ですから」
「殿はです」
「政につきましても」
「特にです」
「問題はない」
「そうかと」
「そうか、しかし精進せねばな」
それは怠ってはならないと言うのだった。
「政も」
「殿はまだまだお若いです」
「政は経験といいます」
「年季がものを言うといいますから」
「政はです」
「これからかと」
「そうか、経験か」
幸村は彼等の言葉を聞いて頷いた、そしてだった。
そうした話をしつつもだ、信之が帰ってくるまでの間政に励みだ。時折彼自身の婚姻の話を父から聞いた。
それによるとだ、その婚姻は。
「近いですか」
「うむ」
昌幸は幸村自身に答えた。
「そうじゃ」
「そうなのですか」
「近いうちに大谷殿から文が来るが」
「その文にですか」
「娘殿を何時こちらに送られるかをな」
「書かれていますか」
「話は既に整っておる」
昌幸と幸村の間でというのだ。
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