巻ノ四十五 故郷に戻りその二
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「だからな」
「はい、それでは」
「また会う時までですな」
「お互いに笑顔を覚えている」
「そうした間柄ですな」
「そうなった、ではまた会う時までな」
幸村は十勇士達にも微笑んで言った。
「我等は上田で勤め励もうぞ」
「では」
「迎えの方々の中に入り」
「そうしてですな」
「早速はじめよう、ではな」
こう話してだった、そしてだった。
幸村主従は迎えの者達の中に入った、迎えの者達は皆笑顔になってそのうえで彼等にこう言って来た。
「よくぞご無事で」
「お元気そうですな」
「お元気そうで何よりです」
「越後でも大層鍛錬を積まれたとのことですが」
「うむ、この通りだ」
幸村は彼等にも笑顔で応えた。
「元気だ、そして日々な」
「修行に励まれていた」
「そうでしたな」
「そのつもりだ。よき日々だった」
「では、ですな」
「これよりですな」
「上田に戻ってだ」
そしてというのだ。
「政に励みな」
「修行もですな」
「行われますな」
「そうしたい」
このことも言った、そしてだった。
幸村は彼等と共に上田に向かってだ、城に入りだ。
昌幸に挨拶をしてだ、父に言われた。
「よく帰ってきた」
「はい、ここに」
「顔色がいいな」
幸村のその顔を見ての言葉だ。
「体格もよくなっておる、顔立ちもな」
「そうしたものもですか」
「さらによくなった」
こう言うのだった。
「ではこれからもな」
「はい、学問と武芸に励み」
「政もだ」
「承知しております」
これが幸村の返事だった。
「そのことも」
「ならよい」
「さすれば」
昌幸は幸村にあらためて言った。
「源三郎も近く戻って来るが」
「兄上もですな」
「そのことは知っていよう」
「それがしより先にと思っていましたが」
「あちらで婚儀がある」
「兄上の」
「それが済んでからだ」
信之、彼はというのだ。
「この上田に戻って来る」
「だからですな」
「その間は御主には源三郎の分まで働いてもらう」
「わかり申した」
「そしてだ、御主にもだ」
「それがしにもまた」
「婚儀を結んでもらう」
こう言うのだった。
「その話は聞いておろう」
「大谷殿の」
「そうだ、大谷吉継殿の娘御とだ」
大坂城で幸村が大谷自身から話された様にというのだ、昌幸もまた幸村に対してこう語るのだった。それも確かな声でだ。
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