ありがとう!(U建一の半生)
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駐車場に止めた白色の軽トラックの助手席に、モンタを乗せて家路に向かった。手を振っている幸世と二人の女子行員の姿が、軽トラックのバックミラーから見えた。建一は帰路の運転中に、幸世を脳裏に浮かべていた。幸世の優しい笑顔・話し方、建一は幸世に一目ぼれだった。偶々、道の駅の帰り道に、幸世の勤める銀行の支店が在り、幸世との出会いは全く偶然だった。
建一は道の駅に週二回、幸世の勤める銀行の支店に立寄る様になった。モンタは幸世から、手作りの猿用服や帽子を貰った。建一は支店に立寄る度に、山菜やキノコを持って行ったが、途中から支店長・信雄の冷たい横槍が入り、幸世の軽乗用車のトランクに、入れる様になった。後日、幸世と弟の昌五が、道の駅に来てくれた事は、彼女が、自分の事を気に止めていた事だと思い、建一は嬉しかった。
いつもの様に、建一は道の駅の帰りに、支店を訪れた。窓口に、幸世の姿が無かった多分、席を外しているのだなと思い、ソファーの座り、幸世の戻って来るのを待った。30分経過した。幸世は戻って来ない。1時間経過した。幸世は戻って来ない。建一は窓口で、別の女子行員に聞いた。「高木さんは。お休みしています。噂によれば、長くなると思いますよ」と、彼女は言った。建一は売上金を入金してから、モンタを連れ、支店の第二駐車に行った。幸世の軽乗用車は無かった。仕方なく建一は、モンタを軽トラックの助手席に乗せ帰路についた。帰路の車の中で別の女子行員が言った「噂によれば」の言葉が、気に成った。建一は、幸世の住所も携帯電話の番号も、知らなかった。自宅に帰った建一は「モンタに、猿用服や帽子を呉れる女子行員が、休みを取っているが、少し気になる」と、総一郎に言った。総一郎が「名前は何と云う?」と、聞いた。建一が「高木幸世」と、答えた。「高木、高木・・・」と、総一郎は自問した。思い出した様に「家族に、高木昌五と云う人物はいないか?」と、建一に聞いた。「彼女の弟が、高木昌五だ」と、答えた。総一郎は、慌ててパソコンを開いた。パソコンには、高木家の殺人事件の一部始終が載っていた。建一は、パソコンを食入る様に見た。そこには、昌五の写真と殺された両親の写真が有り、住所も載っていて、昌五の自殺の記事も有った。驚き慌てた建一は、軽トラックに乗り、幸世の住所に急いだ。近頃の建一は、ゴルフ場の反対運動や、野生動物の餌場造りで忙しく、ニュースを見る暇が無かった。建一は幸世の自宅に着いた。呼び鈴を鳴らしても応答がなく、玄関ドアは鍵が掛かっていた・。物音に気付いた隣の住民が、出て来て「今は誰も、住んで居ませんよ。空き家です」と、無愛想に言った。「幸世さんは、何処に居るか、知っていますか?」と、建一は訊ねた。「知りません。この家は、空き家になり、不用心で、私達も迷惑です」と、住民は邪険に答えた。翌日、彼は支店に行ったが、幸世の姿
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