ありがとう!(U建一の半生)
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ありがとう!(建一の半生)
U{フィクションに付き、内容は架空で、
事実とは、異なる処があります}
音一台の赤色のスポーツカーが、夕暮れの直線道路を、猛スピードで走っていた。「信ちゃん、駄目」運転している女に、助手席の男が、ふざけながら抱き付いてきた。前方の対向車線に、白色の軽トラックが見えた。スポーツカーはハンドル操作を誤り、センターラインを、大きくオーバーした。驚いた軽トラックは、ハンドルを左に切った。音軽トラックは、左側の倉庫のブロック塀に激突した。音荷台から、大工道具が道路に散乱した。30メートル程、走り越した処でスポーツカーは停止した。音車から若い男女が降りてきた。「信ちゃん、如何しよう」と、女が言った。軽トラックの運転席に、人の動いているのが見えた。中肉中背の職人風の男が、必死で助けを求め、運転席のドアを開き、道路に転げ落ちた。職人風の男の耳に、男女の話し声が聞こえた。職人風の男の目に、赤いスポーツカーと、ナンバーが見えた。ナンバーは11-29だった。運転席には、真新しい黒色のバットとキャッチャーミットが、床に転げ落ちていた。職人風の男は、暫くして気を失った。「ひー子は無免許だから、運転が未熟だな。俺が運転変わるよ。対向車の軽トラックとは、接触していない。軽トラックの一人相撲だ。ひー子の、無免許運転がバレたら大変だ。早くしないと、クリスマスパーティーに遅れるぞ」と、男は言った。辺りには、人影は全く無かった。男は、面倒臭くなる事を嫌った。二人は、その場を放置した侭、被害者の顔も見ないで、スポーツカーに乗り走り去った。スポーツカーに乗っていた若い男女は、男が久保葡萄園の御曹司・久保信雄で、女は塚本工務店の一人娘・塚本久子だった。信雄は、東京の国立大学一期校の経済学部の学生で、久子は、地元の国立大学二期校の工学部の学生であった。二人は高校時代の同級生だった。信雄は冬休みで帰省し、今日は二人で、仲間と一緒に催す、クリスマスパーティーに行く途中だった。スポーツカーは、無免許の久子が親に強請り(ねだり)、買って貰った車だった。久子は、現在、自動車教習所に通っている最中であった。
中学生の建一は、一人自宅で、父親・総一郎の帰りを待ち望んでいた。今日はクリスマスイブだった。建一の家庭は父親の総一郎との二人暮しの父子家庭で「母親は建一を生むと、即、亡くなった」と、総一郎は、云っていた。建一には、母親の面影は全く無く、総一郎が男手一人で建一を育て上げた。家が貧しく、中学校も碌に行って無い総一郎は、子供の頃から修行をして、大工になった。自宅は、総一郎が廃材を集め、自分で建てた堅固な住宅であった。日当暮らしの総一郎は、雨の日は仕事が無く、収入は不安定だった。現在は、塚本工務店に、日雇大工として勤めていた。今夜は、総一郎の帰りが、何時もより相当遅かった。音早川
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