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ありがとう!(T幸世の半生)
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は、隣近所にも響き渡る程の、激しさだった。怒り狂った昌五は、台所の包丁を取り出し、五郎と昌世の腹を、数回刺した。悲鳴が聞こえた。隣近所の住人が、驚いて飛び出して来た。玄関から、血の付いた包丁を持った昌五が、放心状態で出て来た。住人の一人が、恐る恐る「昌五くん」と、声を掛けたら、昌五は包丁を持って、咄嗟に何処かへ消えてしまった。
幸世は、信雄と帰宅の途中だった。車の中で幸世は信雄に話した。「支店長の子供が出来た様です」信雄は、咄嗟に、道路沿いの、特定郵便局の駐車場に急停止した。「俺の子か?」と、信雄が言った。「はい」と、幸世が答えた。信雄は、暫し黙っていた。「生んでも良いですか?」と、幸世は聞いた。信雄は、黙り続けていたが、口を開いた。「堕してくれ、費用は俺が持つ、幸世の口座に振込んでおく」と、言った。幸世は「分かりました」と、言った。「俺は幸世とは結婚しない。高木さんと親戚になっても、一文の徳にも成らない。俺には将来が有る。幸世とは、今日で終わりだ。電話もメールも、しないでくれ」と、信雄は言った。女癖の悪い信雄に取って、幸世は単なる愛人で、遊びの対象であった。幸世は黙っていた。信雄は、特定郵便局の駐車場から車を出した。幸世は、車窓から街の灯りを、見詰めていたが、彼女には涙は無かった。音自宅付近に差掛った頃、数十台のパトカーの赤い灯りが、目に入った。信雄は、急遽、車から幸世を降ろした。幸世は、歩いて自宅に向かった。自宅付近には、ロープで非常線が引かれ、パトカーの赤色灯が散乱し、野次馬で騒然としていた。近所の住民が、幸世を見て、警察官に話した。警察官が幸世に「高木さんですね」と、言った。幸世は「はい」と、答えた。「此方に来て頂けますか?」と、言い、幸世を刑事に引き合わせた。刑事は「御両親が、殺されました」と、言った。幸世の顔が、一瞬凍りついた。報道陣がカメラを持って、幸世に詰め寄った。フラッシュの嵐だった。刑事は「弟さんの所在が、分かりません。心当たりが、ありますか?」と、聞いた。幸世は首を横に振った。刑事が「御両親は、警察の安置室に運んであります。署まで同行して下さい」と、言った。「はははい」と、幸世は動揺して答えた。幸世は、パトカーの後部席に乗った。後部席で、幸世の携帯電話が鳴った。昌五からだ。「昌五、今、何処に居るの、何処に居るの」と、幸世は矢継ぎ早に聞いた。「姉ちゃん、ごめんね、俺、本当は板前になって、日本食の店を持ちたかった、ごめんね」昌五は、声を詰まらせ泣いていた。プー・プー・プー。携帯電話が切れた。隣に座っていた刑事が急ぎ「携帯電話、貸して下さい。彼の携帯電話の番号は?」と、聞き、無線で本部に連絡し、携帯電話の位置情報で、昌五の居場所を探した。居場所を確認できた。別のパトカーが数台、居場所に急行した。幸世を乗せたパトカーは、警察署に着いた。幸世は
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