ありがとう!(T幸世の半生)
[9/17]
[1]次 [9]前 最後 最初
た。「バレタか」と、昌五が、苦笑いをしながら言った。「どうするの?」と、幸世が言うと「近々、親父に話すよ」と、昌五が答えた。幸世は「そうしなさい、私もサポートするから」と、言った。「姉ちゃん、支店長と付き合うの、やめた方が良いよ」と、昌五が言った。昌五は「時々、店に来る予約の客で、予約専用の、高級料理を頼む客がいる。気になって、レジのカウンターで予約表を見たら、久保信雄と書いてあった。レジ係に聞いたら、姉ちゃんの銀行の支店長だ。俺が厨房から覗き見ると、支店長が同伴する女性は、何時も同じで、恋人同士の様な雰囲気だ。今日も、店に来て居た」と、言った。「分かっている」と、幸世は暗い痛々しい表情で、答えた。幸世は、信雄の要求を拒み切れず、二人は既に、男と女の関係になっていた。幸世のお腹には、信雄の子供も宿していた。
土曜日の事だった。銀行は休みで、幸世は何時もの様に、信雄に誘われ出掛けた。自宅で五郎は「そろそろ、久保さんが幸世を貰いに来るかも?」と、昌世に期待気に言っていた。「母さん。今日は、幸世も昌五も出掛けて居ない。たまには、二人で贅沢でも仕様か?」と、五郎が言った。「そうね、何年振りかしら、御父さんからデートに誘われるなんて」と、昌世が小笑しながら答えた。「市内で、日本料理が美味しい店が有る事を、同僚から聞いた。そこに行って見よう」と、五郎が言うと「高いでしょう」と、昌世が言った。「今日は、大盤振る舞い」と、五郎が言った。運転免許証の無い五郎は、タクシーを呼んだ。二人は日本料理店に向かった。土曜日で、店内は家族連れで満席だった。暫く待ち、二人は着物姿のウエートレスに、席に案内された。五郎は、店で一番人気のある料理を頼んだ。料理がきた。美味しかった。五郎は、さすが市内でナンバーワンの日本料理店だと、思った。店は通常、客席から、厨房が見られる造りだったが、今日は御客が多く、殆ど厨房を見る事が出来なかった。帰り掛けに五郎は、微かな隙間から、厨房を見る事が出来た。五郎は目を疑った。厨房で働いている料理人の中に、昌五が居た。咄嗟に五郎は、昌世にも確認させた。昌世も昌五だと、確認した。五郎は厨房に踏み込もうとしたが、店員に阻止され、止む無く二人はタクシーに乗り、無音で自宅に帰った。自宅に戻った五郎は、鍵の掛かって居る昌五の部屋を、バールでコジ開けた。部屋の中には、料理の本が山積みで、進学の本は殆ど無かった。五郎は激怒した。五郎は、山積みされた料理の本を、全て紐で束め、縛り始めた。昌世は一端、五郎を止めに入ったが、五郎に強要され、一緒に本を縛った。二人は束め縛った料理の本を、近くのゴミ集積場に捨てた。その夜、昌五が、アルバイト先の日本料理店から帰って来て、自分の部屋に入った。部屋の中に料理の本が、跡形も無く消えていた。食堂に五郎と昌世が居た。三人は、言い争いになった。それ
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ