暁 〜小説投稿サイト〜
ありがとう!(T幸世の半生)
ありがとう!(T幸世の半生)
[5/17]

[1] [9] 最後 最初
いた。老婦人は幸世に、内輪話(うちわばなし)を始めた。幸世は微笑みながら、老婦人の話を聞いていた。話し終えた老婦人は、「高木さん、また来るね」と、言って、支店を出て行った。「早川さん、お待たせ致しました」と、幸世が建一を呼んだ。建一は窓口に行った。「前のお婆ちゃん、話が長いね」と、建一は笑って言った。幸世が「ごめんなさい、お待たせして。あの御客さん、一人暮らしで、お子さんは三人、市内に居る様ですが、三人とも、全く自分の処に、顔を出さない。お子さんには、御孫さんも居るそうです。寂しいのですね」と、言った。建一は、老婦人の家族の絆に希薄さを感じ、幸世と老婦人の間に、仄々(ほのぼの)とした明るい触れあいを感じた。幸世は支店での、定期預金の獲得件数が、ナンバーワンだった。建一は、窓口で入金伝票と現金を出し、同時にレジ袋も出した。レジ袋には山菜とキノコが入っていた。「これ、食べて下さい」と、建一が言い、「良いのですか?」と、幸世が問いた。「どうぞ」と、建一が答えた。レジ袋の中味を見て「凄い、有難う御座います。家族で食べます」と、言って、幸世は窓口のカウンターの下の引出しに、仕舞込んだ。建一が、入金を終えて、支店の入り口で、モンタのロープを解いていると、幸世が現れ「モンタちゃんのプレゼントです」と、言って、手作りの猿用衣服を二着、建一に手渡した。薄青色と黄色の二着で、両方とも赤字で、モンタと刺繍がしてあった。「サイズ、合うかしら?モンタちゃんは雄ですか?雌ですか?」と、幸世が言った。建一が「有難う御座います。雄です」と、言って、モンタに、お辞宜をする様に仕向けたら、モンタは幸世に向かって、ペコペコと二回お辞宜をしたら、突然、幸世に抱き付いた。幸世はビックリした。幸世は、モンタに頬擦りをした。モンタは目を白黒と、していた。モンタは、幸世の胸から建一の胸に、飛び移った。「モンタちゃんの写真、撮っても良いですか?」と、幸世は聞いた。「良いよ」と、建一が答えた。幸世は携帯電話を取り出した。建一が「俺がシャッターを切ろうか?」と、言い幸世に抱かれているモンタを撮った。そして建一とモンタは、何時もの白色の軽トラックに乗って帰って行った。幸世は「又ね」と、言って、軽トラックを見送った。建一は、益々、幸世が好きになったが、頬擦りをして貰ったモンタが、羨ましかった。その夜、昌五が、幸世の部屋に入ったら、鼻歌交じりで、幸世が何かを作っていた。「何しているの?」と、昌五が聞くと、幸世が「モンタちゃんの帽子を、作っているの」と、答えた。それは手編みの、小さな帽子だった。「モンタちゃん?」と、訝しげ(いぶかしげ)に昌五が言った。「いつも、山菜とキノコをくれる、銀行の御客さんの子猿さんよ」と、言って、幸世は携帯電話の写真を、昌五に見せた。「可愛いな」と、昌五が言った。久しぶりに見る、姉・幸世の楽し
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ