ありがとう!(T幸世の半生)
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差出した。男は入金伝票に日付・名前・五万円を書き幸世に渡した。「キャッシュカードは、御作りしますか?」と、聞いたら、男は「はい」と、答えた。「キャッシュカードは後日、御自宅に書留で郵送しますので暗証番号を決めて下さい。すぐに通帳を御作りしますので、あちらのソファーに掛けて、お待ちして貰えますか」と、優しく誘導した。男はソファーに掛けて、優しい笑顔の幸世に見とれていた。幸世は、男の書いた用紙を見た。氏名は早川建一(はやかわ けんいち)・住所は此処から三キロ以上離れた山村で、年齢は24歳だった。幸世には、男の年齢が、実際の年齢より、5歳以上老けて見えた。「早川さん。三番窓口にお越し下さい」と、幸世が建一を呼んだ。建一が窓口に行った。「新しく通帳が出来ましたので、お渡しします。通帳の入金金額を、確かめて下さい。印鑑も御返しします。早川さんの子猿さんですか?」と、幸世が言った。建一が通帳と印鑑を、バックに入れながら「そうです」と、答えた。「触っても良いですか?」と、幸世が聞いたら「いいよ」と、建一が答えた。幸世が席を外し、支店の入り口に行った。他の女子行員も二人、支店の入り口に行った。建一が、入り口に繋いであったロープを解いたら、子猿は建一の胸に抱き付いた。幸世と二人の女子行員が、子猿の名前を聞いた。「モンタ」と、建一が答えた。幸世と二人の女子行員は「モンタちゃん、可愛い」と、言って、モンタの頭を撫でた。五分位して「また来るから」と、建一が言って、支店前の駐車場に止めた白色の軽トラックの助手席に、モンタを乗せて立ち去った。幸世と二人の女子行員は、軽トラックに手を振っていた。♪建一は帰路の運転中に、幸世を脳裏に浮かべていた。幸世の優しい笑顔・仕草・話し方、建一は、幸世に一目ぼれだった。今日は、自分の畑で取れた野菜や、山で取れた山菜・キノコを、始めて市内の道の駅に売りに来た帰り道だった。偶々、帰り道に幸世の勤める銀行の支店が在り、幸世との出会いは、全く偶然だった。建一が住んで居る山村は、過疎で高齢化が進み、特定郵便局も無かった。以前には農協の支所が在ったが、統廃合で支所も消えた。
建一は、道の駅に週二回程、出店する様になったが、山菜とキノコの販売は、道の駅では対抗馬が無く好評だった。しかし、山菜やキノコは、山の中に散らばって生息して居るので、採取が大変だった。建一は道の駅に行く度に、幸世の支店に立寄り、窓口で売上金を入金したが、幸世が別の御客に対応している時は、彼女が空くまで待った。フロアーのソファーで待っている間に、建一は携帯電話で、こっそり幸世を撮ったが、幸世は気付かなかった。建一の耳に、幸世の対応している御客の声が、聞き取れた。御客は老婦人なのに、声が大きかった。どうやら、他行から預金を引き出して、この支店に預けにきたらしい。老婦人は、窓口のカウンターに大金を置
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