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ありがとう!(T幸世の半生)
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安置室に通された。二つの遺体が有った。幸世は二つの遺体の面覆いを外した。血の気がない、五郎と昌世だった。幸世は号泣して泣き崩れた。刑事が「御両親に間違い無いですね」と、言った。幸世が首を縦に振り「はい」と、答えた。昌五は、自宅から二キロほど離れた公園の雑木林で発見されたが、自ら、包丁で胸を刺し、生きは絶えていた。夜明け頃、昌五の遺体も、警察署に運ばれて来た。生気を失い、涙も枯れた幸世は、昌五の遺体も確認した。刑事が「今日は疲れたでしょう。別の部屋を用意したので、そこで仮眠を取って下さい。携帯電話は御返しします。後で、未だ聞きたい事が有ります」と、言って、幸世を別の部屋に案内した。部屋には、簡易ベッドと毛布が用意されていた。窓の外は夜明けで、明るくなり始めていた。刑事はブラインドを閉め、スイッチの位置を教え、部屋を出て行った。疲れた。幸世は消灯して眠りに付いたが、幸世は何度も、うなされて、飛び起きた。正午を回った頃、幸世は信雄に電話したが、電話もメールも受信拒否の状態だった。支店に電話した。「今、警察が来ているの。支店には電話しない方が良いよ。支店長も[信用を重んじる銀行の名前が,汚れた]と、迷惑がっていた。此れからも、電話しない方が良いよ」との、同僚の冷たい返事だった。親戚にも数件、電話した。「親族に殺人犯が出て、大迷惑だ」と、言われた。中には、受信拒否をする親戚も有った。友達にも電話したが同様に、関わりたく無い態度だった。幸世は、一度に家族全員を失ったが、周りは、四面楚歌だった。午後、幸世は取調室で刑事から、家族関係や昌五の動機などに付いて、訊問を受けた。「未だ、聞きたい事が有るかも知れないので、旅行など、遠方には行かないで下さい」と、担当の刑事から、告げられた。訊問は長時間に及んだ。幸世はパトカーで送られ、帰宅したのは、その日の夜だった。3
翌朝、幸世が表に出ると、周りの住民が、ひそひそ話をしていた。幸世が挨拶しても返す人は無く、皆、余所余所しい態度だった。翌日、担当の刑事から「検案が終了したので、遺体を取りに来る様に、して下さい」との電話があった。幸世は途方に暮れ、刑事に「如何すれば、良いのですか?」と、聞くと「葬儀社は、職業別電話帳でも、NTTの電話案内の104でも、調べる事が出来ます。貴方が葬儀社に依頼して、遺体を取りに来る様に、手配して下さい」と、言われた。幸世は戸惑った。以前、同僚の親が亡くなった時の葬儀で、自分が、受付係を担当した事を思い出した。親切な葬儀社だった。幸世は、その葬儀社に電話した。幸世は警察署に直行した。葬儀社は即、警察署の安置室に来て、三人の遺体を、葬儀社の霊安室に搬送してくれた。霊安室で葬儀社は、三人の遺体を棺に納めた。迅速な対応だった。幸世が「式はしないで、火葬のみで、お願いします」と、言った。葬儀社が「分かりました。火
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