貴方の背中に、I LOVE YOU(後編)
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経過した。この国の政権も、保守派からハト派のリベラル政権に移っていた。新政権が発足して間も無く、ハーモニーの元に、新政権から恩赦の通達が届いた。二年、刑期が軽減された。平の灌漑事業の功績や、無償の学校・peaceful school YASUZOUや、父・正義の偉業も、新政権の耳には入っていた。捕えられた革新派の政治家の供述で、自分がイスラム反政府武装組織の人間である事実を、平に隠していた事も、新政権は入手していた。革新派の政治家が供述した時期は、平の拘束当初であって、平に反感を保持していた旧政権は、その供述を、握りつぶした事も判明した。
平は、やせ衰えた容姿で一人、刑務所の正門を出た。一台の乗用車が停まって居るだけで、人影は無かった。平は、自分が早期に出所出来る事を、皆は知らないのだ、と悟った。平は、刑務所の壁伝いに歩き始めた。停車していた乗用車が、平の後を追う様に、静かに動き出したが、平は気付かなかった。平は、壁の端を曲がった。乗用車は、曲がり角の手前で停まった。乗用車から一つの人影が降り、平の背後に付けた。片手で平の目を覆い、片手で背中に、I LOVE YOUと書き、背後から抱き締め「平、大好き!」と、囁いた(ささやいた)。何処からともなく、沢山の車が平の周りに集結した。ハーモニーは、平に抱き付き離れなかった。目には涙で一杯だった。車から、続々、リベル・アキ・ダニエル・ガルシア専務・ロベルトやフィリピン武井鰍フ社員やpeaceful school YASUZOUの子供達までもが、降りて来て涙で平らに擦り(すり)寄った。全員が嬉し涙で泣いていた。平は、ハーモニーの携帯電話から日本の安造に電話した。安造は、声を詰まらせ泣いている様だった。電話を替わった夕子も、喜び泣いていた。夕子の電話の傍で、幼子の泣き声が聴こえた。平がフィリピンに戻って一年位して辰之助との間に女子が出来たそうだ。名前は安造が、義衛門の妻に因んで、朝子と名付けたそうだ。今、朝子は安造を「お爺ちゃん」と、呼んでいるそうだ。蛍の家の澄子にも電話した。澄子も、喜びと安堵の気持ちで泣いていた。蛍の家の子供達も、平の声を聴きたくて、次々に電話を替わった。オフィスに戻り、社員達の祝福を受けた。慰霊碑の在る町長達も、駆け付けた。国内外からの祝福の電話が続いた。平、解放のニュースは日本にも届き、革新派の政治家の供述の真相も伝わった。その日、フィリピン武井鰍ヘ、祝福のお祭り騒ぎになった。その夜、平とハーモニーがコンドミニアムに帰ったのは、深夜になった。平とハーモニーを二人だけにして上げたい気遣い、リベルとアキはpeaceful school YASUZOUに戻った。部屋に入るや否や「大好き、平」と言って、ハーモニーは平に抱き付いた。ベッドルームに入り「今夜は一杯抱いて」と、言い、ベッドに裸体で寝た。
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