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貴方の背中に、I LOVE YOU(後編)
貴方の背中に、I LOVE YOU(後編)
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、桃子の表情が冴えなかった。ダウン症の桃子は、口が不自由で、自分の体調が悪いのを、伝える事が出来なかったのだ。救急車が来て、救急隊員が瞳孔と脈を確かめ、合掌してから、病院へは搬送はしないで、戻って行った。暫くして、検死官の医師が来て、死亡を確認した。死因は、ダウン症の人間が多く発症する、合併症に依る先天性心臓疾患だった。桃子の死に顔は、安らかだった。安造と澄子は、以前から「ダウン症は、平均寿命より、三分の一位しか、生きられない」と、医者より告知されていた。桃子は倍以上、生きた。安造は「子供達の為に長い間、頑張ったな。ご苦労さん。有難う」と、言い、合掌した。全員、倣って(ならって)合掌した。タマが、布団の中から離れなかった。その日、蛍の家の子供は、泣き声が止まらなかった。桃子の訃報は、即座に、蛍の家の卒業生に知れ渡り、卒業生の弔問が、後を絶たなかった。面覆いを外し、卒業生は皆、「小ママ(ちいまま)!」と、叫び泣き崩れていた。二日後、無宗派の葬儀を、蛍の家で執り行った。蛍の家を、葬儀会場に指定したのは、桃子が一番頑張った処で、安造の心遣いだった。祭壇には、桃子が毎日料理した、野菜畑の野菜が、沢山並べられた。棺の蓋は、出棺まで閉めずにいた。タマは、桃子と一緒に、棺の中に入った侭で、出ようとはしなかった。卒業生や、蛍の家の子供達の弔辞が、葬儀の大半の時間を占めた。子供達に依る合唱は、葬儀の挽歌になった。その曲は、ダウン症の桃子が、常に口ずさんでいた、唯一の歌だった。桃子の蛍のペンダントは、リベルが引き継いだ。出棺の時間になったので、澄子がタマを棺から取り出した。棺を皆で霊柩車に運び、桃子は永久(とわ)に旅立った。皆が合掌し、霊柩車のクラクションが、長く、長く、鳴り響いた。皆の、啜り泣きの声が、止まらなかった。火葬場から遺骨を持って、蛍の家に戻った。桃子の部屋に入ると、タマが、悲しそうにポツーンと座っていた。翌日、合祀の墓に桃子の遺骨を納めた。納骨には、大勢の卒業生や、蛍の家の子供達も、立ち会った。卒業生から「小ママ(ちいまま)、有り難う!」と、泣き声混じり叫び声が、上がった。全員が悲痛な思いで俯いていた。真冬の、寒い日の納骨だった。その日、納骨を終え、蛍の家の戻り、桃子の部屋に入った。タマが居た。タマの目は、桃子の帰りを、待ち侘びている目付きだった。
葬儀も一段落して、安造達は屋敷に戻って来た。ハーモニーとリベルには、フィリピンと日本との文化の違いの毎日だった。ハーモニーは、平の為にと、夕子とアキに教わって、日本料理の勉強を始めた。味噌汁に始まり、キンピラ・天ぷら・肉じゃが・・・など、大まかの料理を教わった。奥の深い日本料理を覚える事に、ハーモニーは悪戦苦闘の毎日だった。同時に、ハーモニーとアキの語学の勉強も再開した。
暫くした夜に、澄子から安造の元に電話が来た
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