33話 所業の残骸 3.2
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* ムラサメ研究所 研究棟内 廃棄場 3.2
シロー・アマダは激痛とただ闘っていた。鼓膜は破られ、四肢を斬られ、両目を刳り貫かれ。
ただ舌と歯が健在だったことが男にとって幸いだった。
「うう・・・ああ・・・」
全身が焼ける様に痛む。毎日焼き鏝を当てられて皮膚が壊死になりかけていた。
髪も焼かれ、何故こんな目にあったのかも自分でも謎としか言いようがなかった。
今はもう地獄のような拷問から抜け出せたことは確信していた。肌での探りだったが、鼻は利いたのでその戦場でも嗅いだことあるどきつい死臭を感じた。そこは死体置き場のようだ。しかしその置き場はただ山にしてあるだけのもの。
どうやら自分は死んだと勘違いで認識されたようだと薄れゆく意識の中で考えた。
記憶を辿ると半年前、アジア戦線でのカラバの難民キャンプでシローとアイナが他のスタッフと共に
ティターンズに反対する者達、弾圧されてきた者達へ運動に火種を消さぬように支援していた。
シローは運ばれてきた物資を作業用ロボットを使い、仕分けをしていた。
アイナはその傍のテントで子供たちに食事を配っていた。
「はーい、慌てないの。まだ沢山あるからね」
アイナが明るく、難民の子供たちへ次々と配給する。
その傍にひと段落したシローが歩み寄っていた。
「アイナお疲れさん」
「あ、シロー。貴方もね」
「ティターンズの軍国政策に反対する者達はこのように追いやられてしまう。世界を変えるのはこんなささやかながら芽生えるまでの運動だ」
シローは厳しい視線でこの活動の意義を語っていた。アイナも真顔で頷いた。
「武力でなく対話で分かり合える時代が来るまで、私たちの戦い方はこれね」
「そういうことだ。道は険しいが・・・」
「分かってるわ。大丈夫」
そう語り終えた次の瞬間爆風が起きて、シローの記憶は途絶えた。
次目覚めたのはここの実験区画の無機質な部屋の中だった。
「・・・シロー・アマダくんだね」
どこからともなく声が聞こえた。シローは椅子に縛られ、身動きが取れないことに気が付いた。そして力の限り必死にもがいた。
「無駄だよ。目の前に居るひとは分かるかね」
そう声が聞こえると目の前が真っ白な壁だったのが透けて、中にはアイナが同じく縛られていた。
「さて・・・君たちのデータを調べさせてもらった。どうやら被検体はこちらの女性の方が相応しいらしい」
データ?相応しい?何のことだとシローは思った。シローに映るアイナの姿は何故かぐったりしていた。
「お前!アイナに何をした!」
シローが叫ぶと、その問いかけに声が答えた。
「彼女の下地を作るにちょっと投薬を施した。より強烈に印象を与える為君
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