10部分:第二幕その三
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トスカ 「有り難うございます」
トスカはにこやかにその挨拶に応える。その手にあるブレスレットはルビーとサファイア、そしてダイアモンドで飾られている。カヴァラドゥッシからの贈り物である。
男達がトスカの周りから去ると今度はスカルピアが近付いて来る。他の男達と同じ様にトスカの手に口付けをする。
スカルピア 「こんばんは、トスカさん」
トスカ 「はい」
トスカは彼にもにこやかに挨拶をする。他の者達がスカルピアを見て半ば無意識のうちに後ずさりして下がっているのには気付かない。
トスカ 「(不意に思い出したように尋ねる)時に男爵」
スカルピア 「(立ち上がって)何か?」
トスカ 「あの脱獄囚は捕まりまして?」
何もわかっていないといった様子でスカルピアに尋ねる。その言葉を聞いて後ろにいる客達は顔を顰めさせたりしていた。引いているのだ。
パイジェッロも色を失っている。トスカはそれにも気付いていない。
スカルピア 「(あからさまに不機嫌な顔で)それが貴女にどういう関係が?」
トスカの顔色等を探りながら問う。
スカルピア 「おありでしょうか」
トスカ 「(やはり何もわかっていないといった顔で)牢獄からようやく抜け出ることのできた気の毒な方ですから。気にいるのです」
スカルピア 「ほう、それでは御聞きしたいことがあります」
トスカ 「何でしょうか」
スカルピア 「若しその脱獄囚が貴女の家の玄関に来たならば。貴女はどうされますか?」
トスカ 「(純粋な顔で)開けてあげますわ」
男達 「ちょっとトスカさん」
男達 「それは」
誰もが言葉を失うがやはりトスカは気付いてはいない。スカルピアはあえて表情を消してそのトスカに対して感情のない声で述べる。
スカルピア 「それでは貴女はその脱獄囚と一緒にサン=タンジェロ城に入ることになりますが。それでも宜しいのですかな?」
トスカ 「そうなのですか?」
スカルピア 「御存知ないのですか」
トスカ 「ええ、何も」
スカルピア 「ではいいです」
トスカから顔を離す。そうして一人呟く。
スカルピア 「白か。しかも情報も集まりはしない。困ったな」
そこに声が告げられる。
侍従 「王妃様のおなり!」
貴族達 「おお」
貴族達 「遂に来られたか」
それまで広間中に散らばり談笑し酒や料理を楽しみ賭け事に興じていた一同が左右に整列する。カンタータを鳴らしていた樂者達は国歌を演奏しだす。そうして王妃を出迎える雰囲気が作られる。
大勢の従者達を従え王妃マリア=カロリーネが入って来る。豪奢な絹の白い
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