1部分:第一幕その一
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リーノ 「だといいんですがね」
エウゼッペ 「優しい方だし礼儀正しい。しかも気前のよい方だしな」
ゼッナリーノ 「その通りです、よい御主人ですよ」
エウゼッペ 「よき主人に巡り合うのは一生の幸福」
そう高らかに言う。
エウゼッペ 「そうだな」
ゼッナリーノ 「その通りです。ですから閣下の悪口は」
エウゼッペ 「わかったわかった」
エウゼッペは教会の中の掃除にかかりゼッナリーノは絵の具や筆の手入れにかかる。そこに一人の男がやって来た。黒い髪と目をした端整な男である。オーストリア軍の軍服を着ている。左手の扉からやって来る。二人は彼の姿を認めると直立不動になった。
エウゼッペ 「これは将軍」
ゼッナリーノ 「どうしてこちらへ」
伯爵 「マリオがいるのではないかと思ってね」
二人の前に来て告げる。手で二人に姿勢を崩すように指示を出す。
伯爵 「どうやらいないようだな」
ゼッナリーノ 「ユダヤ人街に行っておられます」
伯爵 「ユダヤ人のところに?お金を借りにでもかい?」
ゼッナリーノ 「いえ、画布を買われにです」
伯爵 「そうか、それでか」
ゼッナリーノ 「はい」
彼の言葉に頷く。
ゼッナリーノ 「それで今は」
伯爵 「いつ変えるかな、それで」
ゼッナリーノ 「もうすぐだとは思いますが。詳しい時間までは」
伯爵 「わからないのか」
ゼッナリーノ 「申し訳ありません」
伯爵 「困ったな、それは」
そこまで聞いて困った顔を見せる。
伯爵 「すぐに伝えたいことがあるからな」
ゼッナリーノ 「それは一体何でしょうか。よければ私が」
伯爵 「いや、マリオに直接言いたい」
首を横に振って言う。
伯爵 「私の口でな」
ゼッナリーノ 「左様ですか」
伯爵 「少しなら待てるが。来るかな」
カヴァラドゥッシ「あれ、ゼッナリーノ」
ここでそのカヴァラドゥッシの声がその左手の扉から聞こえてきた。
カヴァラドゥッシ「誰かお客さんでも来ているのかい?」
前後に短く切った黒い髪に顎鬚を生やしている。服は青い丈の長い上着に白いシャツと黒ズボン、赤いタイである。靴はブーツといった格好である。
カヴァラドゥッシ「(伯爵を見て)あれ、兄さんじゃないか」
伯爵 「(弟の方に顔を向けて)来たか、マリオ」
カヴァラドゥッシ「来たかってまた随分物々しいね。どうしたんだい?」
伯爵 「話がある」
真剣な顔で弟に対して言う。
伯爵 「少しいいか」
カヴァラドゥッシ「(兄の様子に何かを感じ)訳ありみたいだね」
伯爵 「二人で話をしたい。いいな」
カヴァラドゥッシ「わかったよ。
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