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暴君の来訪
1部分:第一章
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性を現わしてきました。
 家のどんな部屋にも入ろうとして入れてもらえないと扉の前で鳴く、わざと人の前で柱で爪を研ぐ、テーブルの上にあがって寝転がる、気持ちのいい場所を独占する。実に猫らしい暴君ぶりを発揮するようになりました。
 気分次第で人を噛んだり引っ掻いたり。爪を切る時はもう大暴れです。
「こんな悪い猫ははじめてや」
 子供の頃実家で猫を多く飼ってきた父の言葉です。
 実際に悪さの限りを尽くしてきました。先に書いたことだけでなくトイレットペーパーの紙を滅茶苦茶にしたり勝手に人の御飯を食べたり。家族の服の上で寝転がって毛だらけにしたりゴミ箱をひっくり返したり。猫がするような悪いことは一通りやってしまったのではないかと思える程でした。
 朝に御飯をあげないと家族を無理矢理起こします。遊んでくれないと側にまとわりついて足を噛んできます。食器を洗っているとこっちが怒れないのをいいことにテーブルの上で寝転がってくつろぎだします。実に悪い猫です。
 しかもさらに酷いことにそんな猫を父が甘やかします。今になってやっとわかったことですが父は無類の猫好きでした。だから全く怒らずに甘やかすばかりなのです。
「怒りや」
 そう言っても知らん顔です。しかし猫は素直です。家族の中で怒らない人間がいるとなると。その人間を舐めてかかるものです。
 父は猫に舐められています。テーブルの上にあがった時に怒っても猫は知らん顔です。ぶつ動作をするとその手に噛み付きます。因果応報と言えば因果応報ですがそんな状況です。とにかく悪さをすることでは空前絶後の悪ガキなのが我が家の暴君であります。
 しかしこんな暴君ですが。家族からは愛されているのです。
 あの小さな姿は何処へやら、丸々太って身体も大きくなりましたが相変わらずの男前です。毛並みも立派です。
 顔がいいので何かと得をしています。家族からはいつも可愛い可愛いと言われて可愛がられています。
 そんな時はゴロリと横になって家族の顔を見てきます。遊んで、と言っている感じです。


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