精神の奥底
58 戻橋
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けなんですか?」
「えぇ、まぁ。というか、このフロアには他のフロアに比べて、最初から少ないんですよ」
「前に来た時もそうでしたけど、このフロアってお客さんが海外の方が多いですよね」
「扱ってるのも、美容家電やら薬やら時計やら海外のお客様に人気の商品ですからね。ここのスタッフは必然的に数カ国語を話せる必要があるので、私はともかく他のスタッフにとっては、ここのフロアに移されるのはある種の罰ゲームですがね」
「まぁ、このフロアにいるってことは、左遷されたような感じなのかな」
「うっ、坊っちゃん…まあ、私も別に隠してるわけじゃないですが、左遷組ですからね。しかも私は元はジョーモン電機じゃなくて、I.P.Cの方の人間でしたし」
久鉄は手際よく作業をしながら、3人との会話もこなす。
棚にはメーカー修理から帰ってきた商品に依頼書の写しが添付されたものが、ジャンル別に分けられている他、修理の手順のマニュアルや接客マナーが壁に貼られている。
態度には少々問題はあるが、店員としてのスキルは確かなものだとアイリスは安心しかかったが、次の瞬間には修理の専門書が並ぶデスクの本棚の中に「ムチムチ黒ギャル女子高生24時」というタイトルの本を見つけて呆れて、首を振った。
「そういえば、2週間と2日前の夕方の4時20分に一緒にいらした背の高いお嬢さんは?今日はご一緒ではないんですか?」
「あっ、あぁ…ミヤは…今日は…」
「その様子だと別れたわけではなさそうで安心しました」
「僕がいつ来たのかも覚えてるのか?」
「えぇ、私達の場合、暇か忙しいかのどちらかです。あなたは大概、暇な時においでなさるので、覚えやすいのです。それにこのフロアにとって数少ない“お得意様”ですから」
「サイトくんはいつも何を買っていくんですか?」
「大概、本ですな。地味にここのブックコーナーはそれなりに品揃えがありますから。ポイントでガジェットも買えるし、逆にポイントで本も買えるからと仰ってました」
「うん。本屋なら本屋のポイントカード、家電量販店なら家電量販店のポイントカードとごちゃごちゃしちゃうからね」
「あとはここのフロアでは薬や時計をたまに。他のフロアではメモリーカードやPCの部品などをお買い上げいただいています」
「学校ではよく怪我をするし、時計も壊れる」
「それにしても…」
「どうしたんですか?」
「いや、来なさるときはいつも必ずと言っていい程、どこかに殴られたような痕があって、浮かない顔を浮かべておいでで。今日は無いようで安心しています」
「兄さんは…その…」
アイリスとメリーは会話の中で普段の彩斗の不明瞭な部分が見えてくるような感じがした。
メリーは普段はネットナビとして彩斗のトランサーの中にいるとはいえ、他の人の目線から見た彩斗のことを聞くのはど
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