精神の奥底
58 戻橋
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事無きを得る。
「じゃあ、また」
「おっと、坊っちゃん、お待ちを」
「ん?」
「この店を含めた系列店でもお使いいただける割引券とポイント3%アップ券です。よろしければ」
「あぁ、ありがとう。いいの?別に何か買ったわけでもないのに」
「えぇ、ちょっとした反抗ってやつです。あと、お忘れ物です」
「ん…」
久鉄はそれぞれ輪ゴムで留められた束の券と、画鋲のようなパーツを手渡した。
彩斗は割引券をアイリスに渡してから、そのパーツを受け取る。
メリーもアイリスもそれが何なのかは分からなかった。
「何?それ?」
「これは…時計のリューズだよ」
「それも先の部分に麻酔か何かが塗ってある。時計をある一定の手順でいじると、引き抜けるようにしてありました」
「護身用に仕込んでいたんだ。でも悲しいことに護身のためじゃなく、人間のクズ1人を黙らせるのに使う羽目になったけどね」
「この濃度と量なら成人男性でも短時間なら、自由を奪えるでしょうな。でも流石にこれも一緒に修理に出すことはできないので」
「そうだね。じゃあ、また」
「えぇ、お元気で。見積もりが出ましたら、ご連絡差し上げます」
「頼んだよ」
彩斗は2人を連れて歩き出した。
先程の話を聞いてから、2人の中で彩斗という人間が組み立て直されている。
きっと彩斗はまだ自分たちに打ち明けてくれていない事がたくさんあるし、本音を殺している部分も多いのかもしれない。
だけど久鉄の話の通りならば、徐々に心を開いてくれている。
今まで自分たちに見せてきた顔が全て仮面では無く、本来の姿だと思うと嬉しかった。
「……ッ…」
しかし反面、彩斗は苦しんでいた。
さっきトイレに行ったのは、決して便意を催したからではない。
例によって、胸の痛みが湧き起こってきたからだ。
原因は分かっている。
未明にスターダストを使って、街に繰り出したことだ。
ハートレスのPCの記録と分析の通りならば、スターダストシステムは適合・不適合に関わらず、肉体に負担を掛ける。
しかも素体である身体、それも心臓という脳を除く肉体の中心部であり、戦闘や運動をすれば一番負担が掛かる部分に致命的なディフェクトを持っているのだ。
彩斗はムーの遺伝子の影響で電波変換というある種、一番のハードルと呼べるもの自体は乗り越えているものの、やはり全く負荷が掛からないはずがない。
2人の視線が向いていないことを確認すると、一度深く息を吸い込んで、胸を軽く撫でる。
「…ふぅ」
「これで用事は済んだけど、この後、どうしようか?」
「いや、用事ができた。せっかくだからタワーの近くまで行ってみよう」
「えっ?タワーですか?」
「2人共、この街の事をあまり良く知らないだろ?錦町のショッピングモールにでも行こう」
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