精神の奥底
58 戻橋
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」
「どんな容姿でした?」
「身長175から8、ザ・好青年という感じの若者で、女性の方同様に恐らく西洋の血筋を引いてらっしゃたような気がします」
「好青年…ハートレスも意外なところがストライクゾーンだね…んっ?」
ハートレスの過去の一部に触れ、ますます興味をそそられかけたとき、彩斗の顔色が変わった。
「どうかしたの?」
「いやっ…」
「サイトくん?」
「用事を思い出した。じゃあ、確かに時計は預けたからね」
「はい。確かにお預かりしました。坊っちゃんの時計の方は2,3週間で返事が来ると思います」
「あとすぐ戻るから、ここで2人の話し相手を頼んだ」
「えっ?...はぁ」
いきなり頼みごとをした挙句、カーボン紙で写された時計2本の引換証を握りしめ、彩斗はその場を急ぎ足で離れた。
アイリスは何かあったのだろうかと心配するが、幸いにも彩斗が向かったのは、トイレがある方向でひとまず胸をなでおろす。
「トイレ…?」
「…坊っちゃん、何かいつもと違いましたな」
「いつもと?」
「えぇ。坊っちゃん、今日は御二人が一緒だからか、幾分か明るかったように思いますよ」
「そうですか?」
「この間いらっしゃった時も長身の女の子と一緒にご来店されて、その時も少し明るかったですし」
「いつものサイトくんって、どんな感じですか?」
「先程も言った通り、身体中怪我だらけで、世界が終わったみたいに暗い顔を浮かべていらっしゃって」
「……」
「そうそう始めていらっしゃった時のことは今でも鮮明に覚えています。確かそちらの妹さんと一緒で、元気いっぱいというわけではありませんでしたが、お店に並んだ商品にいろいろと興味を示しなさる明るくて優しい気さくな男の子でした」
「兄さん…確かに昔は今より明るかったのに」
久鉄という第三者の話を通して、アイリスとメリーは彩斗という人間を再び見つめなおしていた。
親の顔も知らず、物心が着いた頃からディーラーの子として望んでもいない英才教育と能力開発の日々、そして外の世界を知りたくて勇気を振り絞って飛び出してみれば、毎日いじめられる日々が今の彩斗を作った。
そんな理不尽で辛い過去、そして今を生きながらも必死に耐え続けているという現実に2人は自分のことではないはずなのに、どうしようもない憤りを覚える。
「ですから、ここ数年の坊っちゃんを見てると、心が痛くて。段々と元気を無くしていく、何かをすり減らしていく過程を見ているような気がして」
「サイトくん……」
「ある時はまるで死んでしまったかのように感じられる時もありました。いえ...むしろその時の方が多かったかもしれない。まるで生気を感じない、生きている顔をしていらっしゃらなかった」
「......」
「私の見たところ、坊っちゃんは過酷なが
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