精神の奥底
58 戻橋
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「さぁ、着いたよ」
「ここ?思ってたよりずっと大きいのね」
「さすがにデンサンシティの代表的なスポットの電気街にあるからね。それと同時に激戦区だから他にもいろんな量販店がある」
彩斗とメリー、そしてアイリスは同じ街に暁シドウがいるということも知らずに目的地へと辿り着いた。
炎天下の中、誰に頼まれたわけでもなく、必死に燃え続ける太陽にある種の恨みを抱きながら、可能な限り日陰を通ってきた。
場所としてはさっき利用したメトロの駅からメインストリートを通り、旧国鉄の一般的な電気街駅のオールドストリート改札付近にある。
周囲を見渡せば、先程までのあからさまな電気街という感じではなく、いわゆるオタクだけでなく、一般の客も利用しやすいようなカフェやファーストフード店の他、駅直結で多くのアパレルショップがテナントに入った商用ビルまで揃っている。
「でも集まりすぎてても大変じゃないですか?」
「いや、店同士が近いから、比較するのには楽だよ。価格の交渉もしやすいしね。それにしても…」
「?」
「随分と気に入ってくれたみたいだね?」
「あっ、うん…とっても」
新しい服を身につけたアイリスは今までの控えめな微笑ばかりだったことを忘れるくらいの笑顔を浮かべていた。
生まれて初めて服を買ってもらったのがよほどうれしかったのだろう。
更に先程の店員が言うとおり、アイリスだけでなく彩斗もメリーもモデル見えるようなルックスをしているのは確かなようで、かなりの注目の的となっていた。
暑い中、日陰を探しながら歩くだけなく、変な注目を浴び、彩斗は心なしか少し不思議な気分だった。
「よし、早く入ろう!中は冷房が効いてるよ!」
「ハイ!」
3人は店の中に入り、その燃えるような暑さの外界とは完全に遮断された、その心地良い冷気を全身に浴びる。
そこは完全に別世界だった。
気温は言わずもがな、今までの歩いてきた電気街という街の一部であるにも関わらず、全く違う。
今までは完成前のパーツやジャンク品、ノーブランドのバルク品などを扱うが程よく情緒を感じさせるマニア向けの電気街だったのに対し、ここはまるで有名百貨店のように明るく、きちんと掃除がされ、ピカピカのショーケースやデモ機が並び、扱われているのは新品、ほとんどはパーツ単位ではなく完成品を扱った万人向けの電気街という感じだ。
1階はPETやトランサー、スマートフォン、PCなどを扱うフロアで今日も多くの人々が古くなった端末と別れを告げ、新しい端末を契約して新しい生活を始めていく。
彩斗はすぐ右にあった最新家電やイチオシ商品が書かれたフリーペーパーを手に取る。
最近ではネットで簡単にデータ媒体で入手できるものの、やはり機械に疎い人々はデジタル文明がいくら発達しようと一定の割合で存在し、普段から置か
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