深夜、猫カフェで
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らえませんか。見習いとして。」
「うちは、経費を切り詰め切り詰めやってるんで、満足なお給料は出せませよ…。」
「かまいません。なんならボランティアでも。」
「いや、そう言われましても…。」
「でも、お店が今よりもっと流行りだしたら、店長一人じゃ回らなくなりますよ。
猫の数もこれから増えるかもしれないし…。
その前に、予備のスタッフを教育しておかないと。」
「あっははははっ!! そりゃまあ、ごもっともですがね。」
「いっそのこと家族になっちゃえば?」
外野からいきなり声が飛んできた。
「結婚しちゃえばいいじゃない、お二人。」
「そうだよ、家族経営ならお給料はいらないじゃない。」
また、妙な提案を吹っかけてくださる…。
「ぷふふふっ、あはははっ」
店長が思わず吹き出す。
くしゃ顔の店長を見て、紗英も釣られて笑った。
窓辺でつきみちゃんが耳をぴくぴくさせている。
ちょっと煩かったかな。
「そりゃそうとお客さん、今日もお仕事、お休みじゃないんでしょ?
少し眠っておいた方がいいですよ。」
そうだった…。時計はもう2時を過ぎている。
閉店の5時半まで休ませてもらおう。
「今、毛布持ってきますね。」
「あ、すみません…。なんか、ホテル代わりに使っちゃって…。」
「いいんですよ。ほら、他のお客さんも。」
見ると、ソファやカーペットでごろんと横になっている客が何人かいた。
その時紗英は、はたと気づいた。
あっ、この子、どうしよう…。
膝の上にでーんと居座るラグドールのジャバ、じゃない、もんた。
「うーん、このままで寝られるかな。
あっ…、でも足が…、痺れてるぅ…。」
紗英の顔が苦痛に歪んだ。
「でも、猫の感触って、やぱりいいなぁ。」
もふもふ感を楽しんでいると、店長が戻ってきた。
「はい、毛布どうぞ。
あっ、もんた…。ずっとそこに居たんですね。
重かったでしょ。横にずらしちゃっていいですよ。」
「ええ、でも、この毛が気持ちよくて。
今夜はもんたくんに添い寝してもらいます。」
もふもふの巨体をそっと隣にスライドさせ、紗英も横たわる。
店長は他の客たちにも、毛布を配って回る。
窓辺でつきみが背中をぐーっと丸めたり反らしたり、
ゴムのように変化させながら伸びをした。
そしてお約束の大あくび。顔じゅうが大きなほら穴と化した。
するどい牙が露わになり、噛み付かれたらと思うと急に恐ろしくなる。
その穴が「はーう」と閉じると、つきみは甘えた声で
「抱っこぉ〜」と(たしかにそう聞こえた)鳴いた。
「今夜もお疲れさん。ベッドに連れてってやろうな。」
店長はつきみをひょいと抱き上げ、専用ベッドに寝かせた。
優しい手つきでつきみの背中を撫でる店長を眺めながら、
紗英はふと妙な予感が
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