深淵-アビス-part1/安息無き戦士
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いやぁ、あのアルビオンの正規軍の兄ちゃんだけどよ、うちらに引き取られて以来なんかピリピリしててよ、俺たちのいうこと聞こうとしなくてな」
それを聞いて、マチルダはあぁ…と、自分たちが抱え込んでいるもうひとつの問題を思い出した。脱出の際、地下水の器役としてアルビオンの若い兵士を一人、結果的に連れてきてしまったのだ。正規の軍人ということもあり、空賊たちとは折り合いが悪かったようだ。もしウェールズが彼らと仲がよかったと知ったら、どれほど目を飛び出すことだろう。
「こっちに来てとりなしてくれねぇか?」
「…はぁ、わかったよ。テファも着いて来て」
あの男を連れてきてしまったのは自分たちの責任でもある。テファや子供たちも一緒の状態で厄介なやつを連れてきた以上、無視はできない。かといって、まだこの炎の空賊たちに心を許したわけではないので、ここにテファを一人で置くのは心もとなかった。マチルダはテファも連れて例のアルビオン兵の下へ向かうことにした。
黙ってついていく中、テファは森の中のほうを振り返る。顔を見たいはずの人がそこにいない、それどころか誰もいない寂しさがこみ上げる。
(シュウ……)
傷ついてほしくない、その一心で訴えたというのに、彼はそれを聞き入れようとしなかった。それどころか、自ら修羅の道を行こうとし、姿を消した自分の使い魔。
なぜ、彼はああまで自ら傷つくこと前提で戦うのか…
いまだ聞き出せない、彼の故郷における過去の出来事に…自分たちと離れ離れとなったあの日の戦いで姿を見せた、一人の少女の幻に秘密があるのだろうか…。
結局、自分は何もしてやれず、それどころか…
足手まとい
そのたった一言が、重く彼女の心にのしかかった。
そのシュウはというと…。
「く…」
ある場所へと連れてこられていた。彼は今、真っ暗な闇に包まれた部屋中央に設置されている手術台のようなベッドの上に寝かされ、両手両足をベルトで拘束されていた。メンヌヴィルに連れてこられてからだいぶ立つが、未だ意識が戻っていない。されるがままの状態だった。
その部屋は、レコンキスタが隠している怪獣保管庫と同じように、ハルケギニアの文明のものとは決して思えない高度な技術で作られていた。
「実験の準備が整いました」
すると、闇の中からシュウを見ていると思われる誰かの声が聞こえてきた。
「よし、シェフィールド様からの命令だ。実験を開始するぞ。この男のデータの記録を怠るな」
「はっ」
その声は命令を受け、闇の中で、シュウの寝ているベッドと繋がっている装置の一つのレバーをカチッと下ろす。すると、眠っている彼に向けて、ベッドの真上から赤黒い光が照射され始めた。
「うぐ…!?」
意識はないが、その光を浴び始めた途端、シュウは呻き声をあげ、やがて固定された体を激しく揺すりな
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