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ウルトラマンゼロ 〜絆と零の使い魔〜
深淵-アビス-part1/安息無き戦士
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を失ったし……あのガーゴイルを操っている人からも狙われるし…そのせいでシュウやヤマワラワまで…」
「テファ、やめな。それ以上は聞かないよ?」
無理やり黙らせようとするが、テファは黙らない。次々と卑屈さに満ちた言葉をつぶやき続ける。
「私がハーフエルフだから…虚無なんて変な力を持ったから…」
ガーゴイルを通してシェフィールドは言っていた。自分には虚無の力があるということを。それを狙ったがために、怪獣ムカデンダーを使って村を襲撃したのだと。
今回の逃避行…すべての要因は自分じゃないか。みんなが辛い目にあったのは…。
「もういや…こんなのいやだよ…私のせいで誰かが傷つくの…」
父と母が死ぬまで、屋敷の中で暮らしてきた。マチルダに養ってもらうようになり、シュウと会うまでは、森の中で一生を過ごすと思っていた。テファの人生はほぼどこかに閉じ込められた状態だった。だから外の世界や、未知なる物に対する憧れがあった。いつか外の世界を見てみたいという願望をひそかに抱いていた。
けど、シュウを召還してからどこか運命の歯車がきしみ始めたのかもしれない。いざ起こったのは、彼女の心に抱かれた願望とは程遠い残酷さに満ちた現実!
「こんなことなら、召喚の魔法なんて使わず、ただひっそりと森の中で外の世界を知らないまま生きていればよかっ…」
シュウも傷つくことはなかったし、ウルトラマンにもならずにすんだかもしれない。村の子供たちを辛い目に合わせることもなかったし、アスカにも迷惑がかかることも…。
しかし、ついにマチルダがぷちんと切れて、テファに向かって怒鳴り散らした。
「いいかげんにおし!」
バシン!と、乾いた音とともに、テファの頬にマチルダのビンタが放たれる。
「う…」
叩かれた頬を押さえながら、目じりに涙をためたままテファはマチルダを見返す。
「気持ちはわかるよ。確かに、辛いことばっかりさ。けど、自分を含めて誰かのせいにし続けたって、何も変わらない。だからあたしは、辛くてもずっと頑張ってこれたんだ。自分の意志で決めたことだし、そのことであんたを恨んだことなんてこれっぽっちもない。
だから、もうそんなこと…言うんじゃないよ」
「……ごめんなさい。姉さんたちが必死になってがんばってくれているのに、こんな弱音ばっかり…」
俯きながら謝罪するテファ。そんな義妹にマチルダは困るしかない。ようやく口を開いたときに発せられた声は、それはもう弱々しい声だった。
「…」
これ以上きつく言っても、テファの心をいたぶるだけ。そう思ったマチルダは、一度テファをそっとしておいてやることにした。
「姉さん、譲ちゃん。取り込み中かい?」
そんな彼女らを見かね、一人の男がアバンギャルド号の方から歩いてくる。空賊団の一人の男だ。
「今、切り上げたところだよ。なんだい?」

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