【2】−幻の彼女 信濃−
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運命の悪戯か。
砂漠の嵐作戦が始まると彼女から飛び立った艦載機達は『真珠湾の焼き直しだ!』と言わんばかりにイラクとクェートの空を縦横無尽に飛び回り活躍した。
その働きっぷりは彼女の随伴艦の一隻であったHMS『ユリシーズ』艦長ホーンブロワー氏曰く『彼女が味方で本当に良かったよ。もし敵だったら我々はマレー沖の悪夢をもう一度見る羽目になっただろう』と言わしめたほどだった。
そんな彼女に2月1日試練が舞い込む。
イラク空軍がこのまま嬲り殺しになるならとやけっぱちになったのか。
ペルシャ湾の空母機動部隊に特攻紛いの攻撃を加えてきたのだ。
しかも、何を勘違いしたのか彼女を米海軍の空母と思って。
頼り甲斐のある味方(主に米海軍)の援護もあり殆どが彼女を目にする前に落とされる中、蜂の一刺しかMig23から発射された対艦ミサイルエグゾセが彼女に命中するがその身は元戦艦、それも現在した戦艦の中でも最大最強の大和型である。
彼女は46センチ砲の直撃にすら耐える自慢の装甲でエグゾセを弾き返し、その様を目撃した随伴艦の乗組員達を唖然とさせた。
先のホーンブロワ―氏もその一人で一瞬唖然とした後、腹を抱えて大笑いし『見たか副長、カエル野郎(フランス人に対する蔑称)のミサイルが弾き返されたぞ。流石は大和の末妹だ』と言ったとか。
不発だったエグゾセは弾き返された後、ネズミ花火の様に海面を跳ね回り随伴艦の乗組員に冷や汗をかかせたが『ユリシーズ』の単装砲に撃破されている。
この防空戦の直後、多国籍軍総司令官ノーマン・シュワルツコフ大将宛に『しなの』艦長から一通の電文が送信されている。
それは『我ミサイルヲ被弾スルモ損害ナシ。戦闘ヲ継続ス。』という内容であった。
しかも、イラク軍の皆様もお聞きくださいと言わんばかりに暗号化もされず平文で。
それを知ったシュワルツコフ大将は部下に『今回ばかりは連中(イラク軍パイロット)に同情するよ』と、言い。
イラク空軍のとある中佐は『我々の敵は何なのだ。悪魔だとでも言うのか』と言ったとか。
敵味方を驚愕させた彼女は湾岸戦争が終結した後、祖国へ帰り、本来の役目である護国の任に戻り今日にいたるのである。
そんな彼女も後半年でお役目を解かれ。
住処を横須賀の軍港からお台場の船の科学館へと移し記念艦としての余生を送る筈であった・・・
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