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岩清水健一郎という存在
5部分:第五章
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きりと認識していたようですがどちらにしてもそれは非常に惨めなことです。尚且つその弱さから逃れられないで他の人に救われています。
 彼女達は自分で光を見出すことはできませんでした。暗闇の中にいて俯いていただけです。その彼女達に光をかけたのはいじめていた側の人間だったり嫌っていて憎んでいた側の人間でした。彼女達は己のその惨めさをこれ以上はないまでに認識することになりました。自分が惨めな、本当の意味で惨めな存在だと気付くことにもなりました。彼女達の涙はそれだけに貴重なものであるのではないでしょうか。
 彼女達は自分自身に気付くことができました。涙はその意味もありました。自分の醜さ、弱さ、惨めさに気付いたら二度とそうしたものに囚われたくはないと思うのが人間です。彼女達はそれに気付き暗闇から光を見ることもできるようになりました。そうなればもうそこから立ち上がり先に進むでしょう。彼女達は何があろうと絶対に人をいじめることは絶対にしなくなりました。それはその弱く醜く惨めな自分に戻ってしまうからに他なりません。倫子や佐野チーフはそれに苛まれ自殺未遂まで起こしています。ミンチン先生も危うく何があっても護りたかった学園を失うところでした。ミンチン先生にとっての全てのものをです。ここで僕が知っているオペラのお話をさせてもらいたいと思います。
 ヴェルディのオペラに『リゴレット』という作品があります。あえてこの表現を使わせてもらいますがせむしの道化師が主人公です。身体的にも身分的にも差別される側の人間です。時代設定も十六世紀頃です。階級の時代です。欧州の階級制度は日本のそれとは比較にならないまでに強いものです。それはもう絶対です。何しろ今もそれが残っています。欧州の教育制度にその名残が残っています。そうした社会です。その社会において生きているリゴレットは非常に鬱屈した存在です。そしてその鬱屈を領主である公爵のお気に入りの道化師として廷臣である貴族をあげつらい貶めて笑いものにすることで晴らしていました。これは彼なりの復讐でした。
 しかしこれにより貴族達から激しい憎しみを買ってしまいます。それによって自分が何よりも大切にしていた愛娘ジルダをさらわれてしまいます。そのうえで領主である公爵に彼女を差し出されてしまいます。この公爵は非常に好色な人物であり領主であるだけでなく若くて美男子でもあります。舞台においては若手のテノールの練習役であったり名のあるテノールが名曲を快く歌う役であったりします。ルチアーノ=パバロッティが得意にしていた役の一つでもありますが彼以外にもそれこそ無数のテノールが歌ってきています。『ラ=ボエーム』のロドルファや『カルメン』のドン=ホセ、『椿姫』のあるフレード等と並ぶテノールが必ず歌う役の一つです。
 ここまで書いてお気付きになられた方もおられるでしょうが
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