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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 18
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、気配を消してたクセに……!?」
「気配を消さなきゃ奴らに見つかるでしょうが! ここに来るまでだって、俺達がどれだけ神経を使ったと思って……あーもう、なんなの、この不毛なやり取り」

 物凄く渋い顔をして、魂でも出そうな深いため息を吐く青年の言葉に。
 ミートリッテはますます首をひねる。

「いったい、なんなんですか? 私を眠らせて、この家に閉じ込めたのは、ハウィスと貴方でしょう? その前に同じ薬で眠らせたのも、貴方よね?」
「は? ああ、違う違う。確かに今回は彼女だけど、その前はアイツらだ。仮に正式な手順を踏んだ上で本人から許可を貰ったって、留守中の婦人宅に潜むような失礼な真似はしないよ。俺達は」
「アイツら? 俺……達?」

 眉を寄せて尋ねるミートリッテに、青年は苦々しい顔で頭を振った。

「悪いけど。これ以上のお喋りには付き合っていられない。奴らがこっちに気付いたら非常にマズいんだよ。大人しく俺に付いて来てくれ。できれば、その警戒心バリバリの気配も消して欲しい。存在感垂れ流しで危険な山中をうろうろさせるわけにはいかないんでね。その箱が気になるっていうなら、自分の手で運んで。俺は両手を空けてないと、君を護れない」
「護る? 私を?」
「ああ。それが彼女の願いであり、俺達に与えられた役目の一つだ」

 周囲を探るようにザッと見渡した青年は、腕に巻き付けたままの鎖を軽く二回引っ張って、ミートリッテに移動を促す。

 外へ出たら問答無用で相手をぶん殴るなり蹴飛ばすなりして奪った鎖ごと逃走するつもりだったが、どうやらそれをするのはまだ早そうだ。
 背を向けて歩き出した青年には、まったくもって隙がない。
 奇襲を掛けても、この男性には絶対勝てない。
 やめておけと、生存本能が訴えかけている。

 なにより、ハウィスの願いの意味を考える時間が必要に思えた。
 青年の言葉に登場する多くの集団、人物と、その関係性についても。

 ネアウィック村への早急な帰還は諦めてない。
 しかし、ここで何かを見過ごしたら、ハウィスや村の人達を余計な窮地に立たせてしまうのではないか?
 この胸騒ぎの正体を、帰る前に確かめなければ。

「貴方達は……『誰』、なんですか?」

 食材入りの箱を持って追いかけるミートリッテに、青年は振り返りもせず

「守秘義務につき、黙秘の権利を行使する」

 とだけ、答えた。



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