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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 18
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、ここに現れた時点で只人(ただびと)じゃないことは明白。
 今更そんな変装など無意味だ。

「なんて無茶をするんだ、君は!」

 彼は煙る部屋を一瞥(いちべつ)しただけで、この状況を正確に理解したらしい。
 一瞬ためらった後、ミートリッテを強引に立たせ。
 抵抗する間も与えずにシーツを丸ごと押しつけると、ベッドの側面真ん中辺りを、下から抉るように蹴り上げた。

「……は?」

 床にくっ付いていると思ったベッドは、あっさりと横向きに倒れ。
 頭部側の足二本から鎖が引き抜かれる。

(な……何事? へ? どゆこと?)

「ボケーッとしてないで! 早く外へ!」

 青年は、炎のせいで熱くなっている鎖を自身の腕に巻き付け。
 驚愕の光景に目を白黒させるミートリッテの肩を押し。
 扉の外へと、無理矢理に追い立てた。

「……あ、野菜! 食べ物! 勿体ない!」
「そう思うんなら、火付けなんかしないでくれよ、頼むから! 現場の責任とか言って怒られるのは俺達なんだぞ! ああもう、本当、あの方が絡むとロクな目に遭わないな!」
「……あの方?」
「気にしなくて結構! 君はここで待機だ。絶対動かないでくれ。絶対だ。いいね? じゃないと、冗談抜きで俺の首が飛ぶ! 俺を助けると思って、ジッとしててくれ!」
「はあ?」

 両肩をガシッと掴まれたかと思えば。
 やけに必死な形相で懇願されてしまった。
 捕らえた相手に、何故そんな態度を取るのか。
 勢いを増して燃える家に再び踏み込む背中を見ながら、首を傾けた。

「ゲホッ、ゴフ……っ クソ、ここはもうダメだな。急いで移動しないと。大丈夫だとは思うが、万が一山火事にでもなったら君が証言してくれよ? 責任はきっちり負ってもらうからな!」
「そう言われても、困ります」
「困ってるのはこっちだよ! どんだけ破天荒なんだ、君は! これだから自覚がない短絡思考な人間は……! 大体、同じことを何度何回くり返せば気が済むんだよ! まったく!」

 扉の脇に避難させておいた食材入りの箱をミートリッテの足下へ置き。
 自らの短い金髪を、苛立たしげにガシガシと掻き乱す青年。

「何回って……火付けなんて、今まで一度もしてません! 今回のだって、こんな手枷を付けられてたら普通は逃げなきゃって思うでしょうが!」
「拘束したのは事実だけど、()()()まず最初に出せー! とか叫ぶだろ!? でなきゃ、壁を激しく叩くとかっ! どうして呼びかけもせずに、いきなり火付けって発想になるのか、そっちのほうが不思議でならないよ俺は!」
「じゃあ、そうしたら答えてくれてたんですか!?」
「扉は開かなくても、呼ばれれぱ返事くらいはしたさ!」
「えっ!? う、うそ! だって
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