第177話 水鏡先生
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正宗は紗耶夏(黄承玄)の屋敷で歓待を受けると、襄陽城に帰還した。彼は現在は荊州の暫定の主を誰にするべきかで悩んでいた。彼は当面の荊州牧として劉gを押そうと考えたが、朱里と桂花は正宗の案に懸念をしてしていた。
劉gを暫定の荊州牧とすれば、間違いなく劉表の影響を受けてしまい、後々面倒なことになると献策を受けた。では誰を後任に据えるか苦心した。順当なのは正宗の従妹である美羽。彼女は長らく南陽郡太守として善政を行い民衆の人気がある。また、彼女は汝南袁氏の出自であり、名門の血筋であることから豪族達も受け入れやすく納得のいくものだった。しかし、美羽を据えれば、正宗が野心有りと朝廷内に疑心を抱かせることにならないかと正宗は不安を抱いていた。
「正宗様! はわわ大変です!」
正宗が荊州牧の後任を選ぶために資料とにらめっこをしていると、彼の執務室に慌てた様子の朱里が走りこんできた。
「朱里、どうしたのだ? そんなに慌てて。冥琳が到着したのか?」
「はい! 冥琳様が到着しました。でも、それ以上に大変なことが!」
朱里は冥琳が到着したと言った。つまり冥琳が率いた兵二万が到着したことになる。これで上洛の準備は整ったことになる。
「大変なこととは何なのだ?」
「はわわ。先生が来られたのです」
「先生? 慈黄(鳳徳公)が来たのか?」
慈黄は美羽の元に派遣されていた。彼は荊州一の名士であり人脈も幅広い。彼が美羽の元で辣腕を振るえば荊州掌握は順調に進むことだろう。だが朱里が慈黄が来る位で驚くであろうか。正宗もそう思い思案気な顔を浮かべた。
「はわわ。いいえ。違います。先生です」
朱里は気が動転していた。正宗は朱里の様子に困惑するも彼女に聞き返した。
「朱里、落ち着いて話してくれないか? 先生では私は誰のことを言っているのか分からない」
正宗は朱里を落ち着かせた。朱里は彼に言われ深呼吸を繰り返した。彼女は呼吸を整えると正宗の顔を見て口を開いた。
「水鏡先生が正宗様にご面会を求められています。水鏡先生は冥琳様とご一緒です。お会いいただけますか?」
朱里は正宗に質問した。彼女は自分の先生である水鏡先生こと司馬徽が事前連絡も無し面会を求めていることを懸念しているようだった。彼女の杞憂を余所に正宗は大笑いした。
「司馬徽殿。私が出向くつもりであったが、彼女から私を訪ねてくれるか。朱里、喜んでお会いしよう。客人として出迎えたいと伝えて欲しい。謁見の間にお通ししてくれ」
「正宗様、畏まりました。先生をお通ししておきます。冥琳殿も同席させますか?」
正宗は朱里の問いに頷くと仕事を一旦取りやめ立ち上がった。朱里は正宗の意思を確認すると正宗に拱手し去っていた。正宗は名士の訪問に機嫌が良さそうだった。
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