第177話 水鏡先生
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真名は『正宗』と言う」
「正宗様、謹んで真名を預からせていただきます」
「鏡翠、学校の責任者になる条件を聞かせ欲しい」
鏡翠はしばし考えこんだ後に口を開いた。
「条件は三つです。現在の水鏡学院は今まで通り運営させてください。そして、水鏡学院にもご援助を賜りたく存じます。そして、水鏡学院の校長には単福を据えたいと考えています」
鏡翠の申し出は単純だった。彼女が創設した水鏡学院の運営資金を正宗に出させることだった。正宗の考えが本当であれば水鏡学院の援助は喜んでしてくると考えてのことだろう。正宗は「単福」という名を耳にし眉を動かす。徐庶の偽名である。史実では義侠心に厚い人物で知られている。朱里は正宗の様子に気づいたのか表情を緊張させた。
「よかろう。本音をいえば水鏡学院に在籍する全ての生徒は冀州に来て欲しいと考えていたのだがな」
正宗は鏡翠の申し出を快く受け入れた。
「正宗様、ご配慮ありがとうございます。これで冀州に心置きなく参ることができます。生徒には要望を聞くつもりです。冀州に付いてきたい者達は新たな学院に入ることをお許しください」
「鏡翠、学校の責任者はお前だ。私は金を出すだけ、貴賤を問わず門戸を開く学校であれば、私は何も口は出さないつもりだ。だが、不貞の輩が学院に入る込むことは許さない。荒事が必要な時は私や朱里でも誰でも構わない。気を遣わずに言って欲しい」
正宗は神妙な表情で鏡翠に言った。鏡翠は学校の差配を全て任されたことに感動していた。
「正宗様、ありがとうございます。冀州に誇る学校を創ってみせます」
「よろしく頼む。鏡翠、単福なる者はどのような人物か聞かせてもらえるか?」
正宗は徐に徐庶の人となりを聞いた。鏡翠はしばし考えた後、口を開く。
「単福は義侠心に厚く、友のためであれば、例え罪を背負うことになろうと躊躇うことはない人間です」
鏡翠は昔を回想するように正宗に語り出した。彼女は暗に単福は罪人と言っているようなものである。それでも鏡翠が語った理由は正宗が儒者的な偏狭な思考な持ち主でないと思ったからだろう。朱里は鏡翠の言葉に顔色を変えていた。朱里は徐庶の過去を知っているのだろう。史実の徐庶は友人に敵討ちを頼まれ、役人を殺めた。その後、友人の助けで逃げ出し逃亡し剣を捨て学問の道を歩んだとある。この世界の徐庶も似たような経歴であることを正宗は理解した。朱里は神妙な顔で鏡翠の話に耳を傾ける正宗が単福が何者か気づいていると察しているようだった。
「はわわ。正宗様、単福は。単福は決して悪人ではございません。ただ義理堅く馬鹿正直で損する性格なのです」
「朱里、何を慌てている」
正宗は委細承知と言わんばかりに深く頷いた。彼の態度から朱里は徐庶が非道い目に
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