第177話 水鏡先生
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はわざわざよく来てくださった。礼を言わせてもらう」
正宗は椅子を立ち司馬徽にゆっくりと近づくと手を取り礼を言った。彼は自らの一人称を「余」から「私」に変えた。彼が司馬徽に親近感を抱いたということだろう。
「それを待ちきれず参りました。義兄妹の契りを交わした兄・鳳心魚から文をもらい私に誘いがあるということは知っておりました。冀州にて学校を開き教鞭を振るって欲しいとか」
「その通りだ。水鏡殿は引き受けてもらえるだろうか?」
正宗は回りくどいことは言わず率直に要望を伝えた。
「どのような学校を望まれているのです?」
司馬徽は乗り気な様子で正宗に質問してきた。
「貴賤を問わず学べる学校を作って欲しい」
「貴賤を問わずですか?」
当時は学問が出来る身分はそれなりの資産が必要とされていた。しかし、正宗は貴賤を問わずと言った。正宗の言葉に司馬徽は正宗を値踏みするように見た。
「私が作る学校は学ぶ者達の学費を無償とする。勿論、寄宿舎も用意し、そこで生活する者達には生活費を保証しよう。学校の運営資金は全て私が築いた財を投入するつもりだ」
司馬徽は彼女の創設した水鏡学院は無償とまではいかないが低料金の学費で生徒を取っていた。足らない分は生徒達で畑を耕すなどで捻出していた。それでも経営は苦しいかった。
正宗の申し出は司馬徽にとって嬉しい限りだった。だが、彼女は正宗が何故に学費を無償化にし、生活費まで面倒みると豪語するのか理由が知りたかった。あまりに旨い話に疑いを持つのはごく自然のことだろう。
「あまりに学ぶ者達にとって益しかない学校ように思います。そうまでなさる理由をお聞かせ願えませんか?」
司馬徽の表情は返答次第では辞退するつもりであるように見えた。
「別に善意で行う訳ではない。私は平和な世を創りたい。平和な世を創るには強い国を創らなければならない。他国が攻めることを躊躇する強い国だ。そのためには多くの人材がいる。学問を独占する士大夫だけでは駄目だ。より多く門戸を開き、在野に埋もれる才人を集めなければならない。それでも足らない人材は育てる必要がある。その場所が私が作ろうとする学校だ」
司馬徽は正宗の言葉に面食らっていた。彼女にとって正宗の夢は想像を絶していた。
「水鏡殿、有能であることに貴賤は関係あるのか? 私は在野にいる有能な者達の芽を育てたいだけだ。良き国を創るのは人である。士大夫ではない! 水鏡殿、私に力を貸して欲しい」
正宗の話は儒者が聞けば激昂するような内容だが司馬徽は感銘を受けた様子だった。
「車騎将軍、私の真名は『鏡翠』と申します」
司馬徽が真名を伝えたことで、正宗は司馬徽が話を引き受けたことを理解した。
「鏡翠、私の
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