第177話 水鏡先生
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た。噂通りの人物であると推察します。車騎将軍が荊州牧に押される理由は十分に分かります」
司馬徽は一旦言葉を切り正宗を見た。
「車騎将軍が懸念されるのは南陽郡太守を選ぶことで身内贔屓と揶揄されることですね?」
司馬徽の問いに正宗は頷いた。
「車騎将軍、ご心配に及びません。民草のことをお考えであれば南陽郡太守を自信を持って押されるべきです。力無き傀儡を上に据えた所で国の乱れとなるだけです」
司馬徽は厳しい表情で正宗に言った。その態度は正宗に説教をしている様に見えた。周囲の者達も同様だった。
正宗は双眸に強い意志が漲らせた。
「水鏡殿、貴殿の意見を聞き、気持ちが固まった。迷わず従妹を押すことが出来そうだ。朱里、朝廷へ南陽郡太守を荊州牧として奏上せよ」
正宗の指図に朱里は満足そうに頷き拱手した。
「車騎将軍、もう一つ意見してもよろしいでしょうか?」
正宗と朱里が会話していると司馬徽が割って入ってきた。
「聞かせてもらおう」
「車騎将軍、こたびの討伐の恩賞がありましょうが全てご辞退ください」
正宗は司馬徽の献策の意図を探った。元々彼は恩賞を辞退する腹づもりである。辞退する代わりに劉表の助命を願いでる。そうすれば劉表の助命は確実なものになると見越していたからだ。
「何を望めばいいのだ?」
正宗の問いに司馬徽は謀略を思いついた軍師の顔に変わっていた。
「車騎将軍は劉景升様を救うつもりであると思います。その見立てに間違いはないでしょうか?」
「そのつもりだ」
「では、皇帝陛下が褒美の話を出せば、劉景升様の助命を願い出られることを勧めます。そして、南陽郡太守の荊州牧の正式な就任を直に奏上なさるのです」
「随分と大胆であるな。百官の者達の中に余が野心を抱いていると思い反対する者が出るかもしれんぞ」
「荊州を鎮撫された車騎将軍が直々に奏上されるから意味があるのです。南陽郡太守では無く車騎将軍を押す者達もいるかもしれません。車騎将軍が『逆賊とはいえ荊州の者達を多く殺めた自分より善政を行い民草の信任のある者が治めた方が乱れた荊州も早く安寧をもたらすことができる』と言えば、車騎将軍を野心を抱く者と誹る者達はおりませんでしょう」
「それでも騒ぐ者達がいるかもしれんぞ」
正宗は鋭い目で司馬徽を見た。彼の懸念は賈?である。賈?は間違いなく正宗の縁者が荊州牧になることを間違いなく嫌い邪魔をしてくるだろう。
「そのような者達は天下の安寧を望まぬ者ということです。皇帝陛下に堂々と意見なされませ」
司馬徽は正宗の言葉を一蹴し強い口調で意見した。正宗は得心したのか満足気な笑みを浮かべた。
「水鏡殿、噂通りの人物であった。本来であれば私が出向こうと思っていた。本日
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