第177話 水鏡先生
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正宗が謁見の間で椅子に腰をかけていると、程なくして冥琳と、その後ろに女性が付いてきていた。朱里は二人を先導して共に入ってくると正宗の側に近づいてきた。
冥琳と女性は正宗の面前まで来ると両膝を着き拱手し頭を下げた。女性は冥琳の少し下がった位置にいた。
「正宗様、兵二万を伴い参りました。後ろにいる御方は水鏡殿にございます。正宗様に目通りを願いたいと、私の元に参られたので同行していただきました。水鏡殿、もっと前に」
冥琳は司馬徽に気を遣いながら前に出るように促した。司馬徽は冥琳の勧めを受けて、冥琳の隣に進み出た。
「車騎将軍、わざわざ面会の機会をいただき感謝いたします。私は司馬徳操と申します。巷では水鏡などと呼ばれております。荊州を鎮撫されお忙しいと思っておりましたが、一度お会いしたいと思い罷り越しました」
「水鏡殿、面を上げられよ。堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。ささお立ちください」
冥琳と司馬徽は正宗に促されるまま立ち上がった。
「水鏡殿。余は悩み事がありましてな。高名な水鏡殿に意見を聞かせてもらえるか?」
正宗が司馬徽に語りかけると朱里は彼の話す内容を理解出来たのか得心した表情に変わった。
「意見でございますか? 非才ではございますが、私でよろしればお力にならせていただきましょう」
司馬徽は顔を上げ知的な笑みを浮かべた。彼女の顔から年齢は四十位と正宗は見た。銀色の長髪を後ろで結わえ、その表情は品があった。
「悩みというのは他でもない。余は暫定の荊州牧に誰を据えるべきかで悩んでいる」
「車騎将軍は誰を押したいとお考えなのでしょうか?」
司馬徽はいきなり正宗に質問した。彼女は車騎将軍の存念をまず聞きたいようだった。
「問題を先送りにするならば、劉景升殿の嫡女・劉g殿と考えている」
司馬徽は意味深な笑みを浮かべた。彼女は朱里に視線を向けると、朱里が正宗の考えに不服そうな顔をしていた。朱里は司馬徽に見られていると気づくと「はわわ」と慌てて平静を装った。その様子を見て司馬徽は笑みを浮かべた。
「車騎将軍、本音でお話いただけないでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「車騎将軍が劉g様を押されると気持ちを固めておられれば、家臣が何を言おうと劉g様を押されればよいと存じます。ですが、悩まれているということは本当に押すべき人物が居るのではございませんか?」
正宗は司馬徽に言われ苦笑した。
「隠し立てしても意味がないな。余が押すべきは従妹である袁公路であると考えている。家臣もそう意見している」
「袁南陽郡太守は善政を行い民草に愛されていると聞き及んでおりました。襄陽に参るまでの旅路にて南陽郡を通りましたが、民草の表情は明るく活気に満ちておりまし
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