第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第四節 転向 第二話 (通算第77話)
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なかったからだ。
「マジだって!ほら、なんてったけ、投降してきた……あいつの関係者だってよ!」
メズーンもランバンも絶句した。確かにメズーンは脱走扱いにされても不自然ではない。しかし、それにしては早すぎる。あらかじめ用意していたかのような迅速さだ。
「そ、それは確かかっ!?」
メズーンが振り返ると、デッキクルーはギョッとした顔でメズーンを見た。
「お前……」
「俺がそのパイロットだ」
メズーンは食って掛かる様にデッキクルーに詰め寄る。泡を食った様に慌てて逃げ出そうとするクルーをランバンが遮った。
「どういうことだよ?」
ランバンは大男だ。普段は愛嬌のある笑顔で厳つさが薄れているが、凄めば普通以上に恐い。気の弱い奴なら失神しかねない。〈笑顔のフランケンシュタイン〉とは良くいったものだ。
「し、知らないよっ……!」
クルーに怯えの色をみると、自嘲気味に軽い舌打ちをして、顔をツルリと撫でた。人懐っこい愛嬌のある笑顔を浮かべて、クルーを覗き込む。
「白旗で来た奴が言ったのかい?」
怯えた表情を残したまま、首を横に振る。クルーとて正確な情報を持っている訳ではない。誰かの臆測も含まれているだろうが、問題は出所だった。
「見張りが…カプセルを見たって…」
しどろもどろなクルーから、それだけを聞き出すと、メズーンはMSデッキへ走り出した。
「メズーン!」
ランバンが追う。だが、追い付かない。メズーンは自分が乗って来た《ガンダム》に取り付いていた。
メズーンの機体は右肩から腕部が丸ごと取り外されており、正に解体の最中である。デッキ横のハンガーにあった《ガンダム》の周りには誰も居なかった。解体途中で放置されていたのだ。
初めての艦であっても、連邦軍規格である以上、ハンガーやデッキの構造は大差ない。メズーンはキャットウォークを通らず、ガントリーレーンを越えて、コクピットハッチを掴むと、頭からコクピットへ飛び込んだ。
「メズーン!」
プライベート回線で呼び掛ける。返事がないことは解っている。解っていても、呼び掛けなければいけない。自分の《ジムII》の位置を確かめつつ、オープン回線に切り替えた。
「《ガンダム》を外に出すな!」
それが今のランバンにできる精一杯だった。
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