五十二話:旧友
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手早くバインドで拘束し、万が一にも逃げ出さないように気絶させてからゼストはレジアスに振り返る。
「邪魔が入ったが話を続けよう」
「そいつはどうするつもりだ?」
「直にここにも局員が来る。あの騎士なら職務を忠実に果たしてくれるだろう」
ここに来るまでに何とか巻いてきたシグナムのことを思い浮かべながらゼストは答える。その言葉にレジアスは元は地上を守るストライカーだった親友が今は犯罪者となっている事実にどことなく憂いを覚え、同時に自身も罪を犯していることを思い出し渋い表情を見せるのだった。
「単刀直入に聞くぞ、レジアス。あの事件はお前の差し金か?」
「……確かに儂はスカリエッティと手を組んでいた。だが、お前とお前の部下を殺す気などなかった。別の事件に回して嗅ぎ付けられないようにしたかったんだが……それが結果としてお前をあの場所に向かわせてしまった……」
「そうか……」
「こんなことを言う資格などないと分かっている。だが、それでも……儂はあの事件をずっと後悔してきた。お前も部下も殺したくなどなかった…!」
もしも、ゼストがあの時死んでいなければ、命令に従いスカリエッティのアジトに行っていなければレジアスは引き返すことができたかもしれない。だが、何かを失ってしまったが故に引き返すことを許せなかったのだ。大切な者を失った代償に必ず目的を達成しなくてはならないと強迫観念に際悩まされてきた。それが彼の本心であった。ゼストは後悔の念を吐き出す親友を黙って見つめていたが、やがて静かに口を開く。
「レジアス、お前のやり方が正しかったかどうかは俺には判断できない。だが、それでも聞いておきたい。お前は、小さな何かを切り捨てていくやり方が正しいと心の底から思っていたのか? 小さな事件の犠牲者のために憤り、犠牲を許せなかったお前が本当に納得をして行動できていたのか?」
大の為に切り捨てられる弱者がいる地上の現状に疑問を抱きレジアスはそれを変える為に上を目指した。過激なやり方であったが本質にはいつも地上を守りたいという想いがあった。そんな彼が地上すらも傷つける悪事に手を染めるのはどれだけの苦痛であっただろうか。
ゼストの問いかけは責めるものではなく友の心情を思いやる類いのものであった。だからこそ、レジアスは逆に苦悶の表情を浮かべ苦しんでいるのだ。これほどまでに自分を思いやってくれる友を殺めてしまった事実に。
「“俺”は……納得できなくとも地上全体の為になるように行動するつもりだった。だが、結局のところ何もできなかった。全体も個も両方守ろうと中途半端になったのが今の様だ。蝙蝠のようにどちらにも見捨てられ結局願いは叶えられなかった」
自嘲気味に笑いながらレジアスは答える。今のレジアスは最高評議会にもスカリエッティに
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