それぞれの夜
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え。そういうストラトは誰かいないの?」
「はっ……!?」
にこにこと顔を覗き込んでくるトレイターさんに、ついいつもの癖で罵詈雑言を吐きかけるが何とか抑えた。
「い、いませんが。」
「守りたい人、とかは?」
「……。」
「俺かな?」
「んなっ!?!?」
「冗談だって。」
たぶん、今の僕の顔は見れたものじゃない。顔全体に熱を感じ、複雑な表情をしているのだろう。前髪が長くてよかったとも思う。
「……君は、強いね。昔のことを後悔することはないの?」
唐突にそう切り出され、僕は火照った顔を冷ましながら言葉の意味を考えた。たぶん、"彼女"のことを言いたいのだろう。
「ないです。いつも僕の背中にいますから。」
「…………そう。」
背負っている剣の重みを改めて感じながら、僕は僅かに微笑んだ。トレイターさんはまた寂しそうな顔をしたが、突然首を振っていつもの微笑を携えた。
「付き合ってくれてありがとう。そろそろ、君も休んだほうがいい。」
「い、いえとんでもありません!貴重なお話が聞けて楽しかったです!」
もうしばらくいたい、などという欲は引っ込めて僕は立ち上がり、コテージの外に出た。辺りは真っ暗で、非常に静かだった。
「君と、君の大切なものを大事にしてね。」
その言葉に深く頷き、僕は自分の寝床へ走って帰った。
背中の剣――"Stella"と銘打たれている――の柄を、軽く握りながら。
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