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バーチスティラントの人間達
それぞれの夜
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「そういえば……ちょっと気になったのですが。いや、よく隊内でも話題にはなるのですが。」
「何かな?」
「……トレイターさんとエフィさん、何がどうなってその、今に至るんですか?」
随分と失礼な質問であることは十分わかっている。他人のなれそめなど聞くものではない。
だが、僕が知る限り、トレイターさんとエフィさんほど特殊な例はない気がするのだ。なにせ、
「エフィさんは、魔導師じゃないですか……。」
僕達"軍"を筆頭とし、人間は長年は魔導師と対立している。何十年も前に魔導師が人間に戦争を吹っ掛けて以来、魔導師と人間の中に友好関係が築かれる例はなかった。そう、学校で教えてもらった。
故によく話題になるのだ。軍を率いている人間が、どうして魔導師の妻を持つのか。魔導師の妻は何の不満も持つことなく、なぜ人間側にいるのか。
「……『愛さえあれば人種など関係ない』なんて綺麗事を語るつもりはないけどさ。」
意外なことに、トレイターさんは微笑を崩さずに、また僕のことを怒らずに話し始めた。
「エフィとは、友達の延長線上そうなっただけ。知り合って間もない頃は彼女が魔導師だなんて知らなかったし……。」
「確かに、夫婦というより友達っぽい印象がありますが。」
「そうかもね。……でも、そのうち俺達は友達っぽくない部分に気がついたんだ。」


「お互いがお互いを放っておけなかった?」「まあ、分からなくもないかな?」
「よーーく考えるのです。トレイターを放っておいたら寂しくて孤独死してしまうに違いないのです。エフィはそれが昔から心配だったのです。」
ベッドが多く並ぶ処置室の隣、衛生兵の待機用コテージ。僕達はエフィさんに手助けを頼まれ、一段落ついていた。
「じゃあじゃあ、トレイターさんはなんでエフィさんのことを?」「放っておけないの?」
「トレイターは優しいだけでなく、心配性なのです。ぼろ雑巾同然だったエフィがほぼ回復しても、随分と労わってくれたものなのです。」
エフィさんが記憶喪失にあったことはもちろんびっくりしたが、何より僕達はトレイターさんとの偶然の出会いの話を聞くことができて興奮していた。まるで、物語みたいで。
「ね、エフィさんは魔導師でしょ?」「でもトレイターさんは人間でしょ?」
「トレイターがエフィを傷つけようとする様子は一切なかったのです。であれば、逃げる必要はないのです。それにトレイターは、すごくいい人なのです。それはお前たちも分かることですね?」
「「わかるよー!!!」」
「だから、エフィはトレイターと一緒にいるのです。例え同じ存在である魔導師を敵に回しているとしても、トレイターのやっていることを間違いだとは思わないのですから。魔導師は実際、悪いのばっかりなのです。」
「なるほどー。」「すっきりしたー!」


「ね
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