トレイターさんの本
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てはいけないものだ。」
そう小さな声で呟くと、"司書"はその様子を嘲笑うように言った。
「その記憶はあなたを脅かすものなのね?単なる恐れから奪ったのかしら。」
「違う!僕は……っ!」
「トレイター!!!」
甲高くエフィさんが叫ぶ。その声に、はっとした様子でトレイターさんが顔を上げた。
「……そう、だ。そう思うなら勝手に思えばいい。どのみち、返す気はない。」
そう言いきると、"司書"はふんと鼻を鳴らした。
「そう。なら私もこれ以上用はないわ。……明日、覚悟なさい。」
そう告げると、リコリスとともにどこかへ転移していった。
「……トレイター、さん?」
"司書"が去った後、顔を伏せ僅かに震える彼に声をかけながら肩に手を添えると、
「…………ごめん、かっこ悪いところを見せたね。」
そう、自嘲気味に微笑んだ。
「この争いは僕が望んで始めたものだ。様々な人に迷惑をかけているのは分かってる。だからこそ……今更後悔しても、遅い。全部元に戻すことは、もうできないんだから……。」
言い聞かせるようにトレイターさんがそう呟いた言葉の意味を、僕は理解することはできなかった。
いや、僕が理解しても、きっと意味がない。エフィさんに引きずられるようにして僕達のコテージを去ったトレイターさんを見送ると、僕は先程の言葉を忘れるためにラーマに訓練を持ちかけた。
この戦争は、魔導師との何百年前も引き延ばされていた決着をつけるためのもの。
そう、頭に刷り込ませるために。
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