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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第10話 黒染めの化け物(後編)
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のパーティーの者まで、こちらをちらちらを見ながら釣られるように追っていった。それを確認にして、“私”はふぅ、と息をつき、視線を落とした。多くの足音が、どんどん遠くなっていく。
しかし耳朶を打ったその足音に、自分の耳を疑った。
数にして、おそらく5人分。それが、近づいてくるのだ。けれども、誰かは予想できてしまったので、顔を上げずに棘のある声を作って言った。
「……聞いていなかったの。あなた達は、“脅されて”いたのよ」
「だ、だが……」
私に落ちる影が増えていく。それを認識して、――――否、認めて、ぐっと手を握りこんだ。
駄目だ。これ以上は、駄目。
私と彼らとの接点を、リンドが覚えていなかったから良かったのだ。かなり無茶苦茶な言い分ではあったが、何とかエギルが巻き添えを食らうことを防ぐことが出来た。だが、直接こうして話しているのを見られたら、もう言い訳のしようが無い。
「……行って」
「――――き……」
「行きなさい!」
ビッと出口を指差す。息を詰まらせる気配があった。しかしそれきり、彼らは動こうとしない。
「…………お願いよ、早く行ってちょうだい。何のためにパーティーを解除したと思っているの」
何のために、わざわざあなたたちを傷つけたと思っているの。
私は、あなたたちに感謝をしているのだ。こんな私を見切らずに傍に置いてくれた。それだけで、十分だった。
そんな彼らまで私の下らない茶番に巻き込むことは、自分自身が許さない。
やがて、大きく息を吸い込む音がした。ハッキリとした、重みのある声が上から落ちてくる。
「……解った」
それはズシンと響き、私の中でこだまして、掻き消えた。ゆっくりと、一歩一歩踏みしめるように、足音が遠ざかっていく。
それをぼんやりと感じながら、 “私”はひっそりと、誰にも視えないように、笑みを“零した”。
これで良い。良いのだ。
悲しみも、悔しさも、恐怖も、苦しさも、何も無い。大丈夫。
だいじょうぶ。
私は、正常に、動けている。
身体がまだ上手く動かせないのは、少し疲れてしまったから。思考がぼんやりしているのは、さっきまでボス戦をしていたから。戦闘が終わった安心感と達成感に、脱力してしまっただけなのだ。
『大丈夫、キカちゃん?』
「……う……、っ」
ああ、とうとう幻聴まで。これは意外と疲れが溜っているのか。早く帰ろう。さっさとあの村まで行こう。
思い出の残るあの村まで、帰るのだ。
『やっと、僕の目を見て笑ってくれたね』
どうして、身体が動かないのか。足先も、指先も、何故ピクリとも出来ないのか。
早く立て。歩け。時間は有限なのだ。無駄には出来ない。
「はや……く」
足に、腕に、力が入らない。
――――俺たちとは違い過ぎる。
痛む胸
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