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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第10話 黒染めの化け物(後編)
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ウンドエフェクトを生真面目に発したのだと理解した後、自分が床に座り込んでいるのも続けて認識した。
視線を上げれば、男が苦虫を噛み潰したような表情で私を見下ろしている。顔を思い切り歪め、舌打ちした。だがそれ以上何もするつもりはないのか、身を翻してしまう。
――――まだ、足りない。全然、足りない。
「……これだけ?」
「…………あ?」
ゆっくりとまるで幽霊のように、重い動作で男が振り返る。けれども、今にも吹き出しそうなものを必死に抑え込んでいるのは見え見えだ。コップの水が溢れるまで、もうひと押し。 私は再びクスリと笑ってやってから、
「もう満足なのかしら。ずいぶん、お安いのねぇ」
「お……まえ……」
「ふーん、そう。あのディアベルって人、ご立派な騎士さんみたいだったけれど、結局はその程度だったのね」
ブチリ。
もし今の男の感情を正確にトレースしたいのならば、そんな効果音が一番適しているだろう。もはや感情のセーブは利かないようで、顔をこれでもかと――――タコでも負けたことへの恥ずかしさに壺へ引っ込んでしまうだろう――――真っ赤にし、ズカズカと苛立ちを隠しもせずに歩いてくる。
「このアマ……、舐めた口利きやがって! 出来るなら、殺して――――」
私は、その言葉を待っていた。
自然と浮き立つ気持ちを抑え、内面とは対象に表情の色を意図的に消した。そして、声の抑揚を無くして機械的に言い放つ。
「殺せば?」
「……は」
ポカンと、呆けたように口を開けた。しかも、目の前の男だけではなく、私の視界に入る限りだと、全員だ。……どうやら、内容がいまいち呑み込めていないらしい。 私は、解らせるべく口を開く。
「そのままの意味なのだけれど……。なんなら、デュエルでもする? もちろん、≪完全決着モード≫で」
それは、デュエルのモードの内の一つ。言わずもがな、これはどちらかのHPが0になるか、同様にどちらかがリザインするまで続く。
つまりこのモードは、この世界で最も選んではならないもの。理由は小学生でも解ることだ。にもかかわらずやろうとするヒトは、相当の阿呆か、感覚がおかしい者だろう。
すなわち、その“おかしい奴”というのが私ということだが。
「……狂ってる」
誰かがそうつぶやいた。それを皮切りに、だんだんとざわめきの波が大きくなっていく。
ひそひそ、ひそひそと周囲の者と話しながら、私を睨みつけてくる。奇怪なモノへ向ける、恐れが滲んだ目。その瞳には、明らかな嫌悪の色が宿っていた。
何だ、アイツは。どうしてこんな女が、俺たちと一緒に居たんだ。何で、どうして…………。
「お前……、自分が何をしたのか分かっているのか!」
「私は、ただ危険を知らせようとしただけだもの。何も悪いことはしていないわ。上手く避けられずに死ん
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