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ソードアート・オンライン 舞えない黒蝶のバレリーナ (現在修正中)
第一部 ―愚者よ、後ろを振り返ってはならない
第1章
第10話 黒染めの化け物(後編)
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だって、ゲームを全く嗜まない私が、ボスの武器の異変に気付けたのだ。もし剣に関する知識を持っていれば、ベータテスターでなくとも気付ける可能性は十分にあった。つまりこれは、ディアベルの死は、全体で背負うべきもののはずだったのだ。全員が、抱えるべき“死”だったはずなのだ。
それなのに彼らは、認めたくない、目を逸らしたい、責任を負いたくない――――そういったものに駆られ、矛先を、ベータテストを経験した者たちへ向けたのだ。何故なら、“簡単”だから。言い逃れのしにくい人たちへ――――手頃な対象へ押しつけて、自分たちは逃げようとしたのだ。特にあの少年の場合、記憶力が良く、ボスのスキルを読むことが出来てしまったから、拍車を掛けることになってしまった。
結果、あの少年が全てを引き受けることになったのだ。
向こうの世界では、良くも悪くも、頭の回転が速かった彼のことだ。このままいけば元ベータテスターが危険に晒されると、勘付いてしまったのだろう。
……まあ私は、彼が≪ビーター≫と呼ばれようがどうでも良いのだけれど。
もし私が矢を放っていなければディアベルは生きていたかもしれない。これは別に彼らを挑発するために発した言葉ではなく、私が実際に思っていることだった。
C隊は、自分たちの横をスレスレで通り過ぎた矢に驚いて後ろへ跳び、後退した。しかし急な動きだったためバランスを崩し、結果ディアベルは死亡した。これは事実だ。何も間違ってはいない。
そりゃあ、私が手を出さなくても、彼が死ぬ未来は変わらなかったかもしれない。しかし、寸でのところで気付いて後退していた可能性だってあるのだ。だが、こんな「もしも」をいくら考えたところで何も変わらない。大切なのは“事実”だけ。未来を予測して行動するのは重要だが、終わったことをあれこれ考えていても時間を無駄にするだけだ。
今回必要なものは、“私が矢を放ち、ディアベルが死んだ”、という至極簡単な現実のみ。
彼の死の責任は全員で負うべきなのかもしれないが、原因を作ったのは明らかに私だ。
ディアベルの死を目の当たりにしたメンバーが、誰かに責任を押し付けて楽になりたいのなら仕方がない。どうせ真正直に「これはみんなの責任だ」などと説いたところで、頭に血が上った人間たちに受け入れてもらえるわけがないのだ。
ならば残された方法は一つ。それが向かう対象を、より正しい者へ向けさせるのだ。
だから私は、訂正した。この状況へ追い込んだのは≪ビーター≫ではないのだと。正しいことを、教えてやったのだ。
「私が彼を殺したのよ。私の、せいなの」
――――あの人のせいじゃない。
限界まで目を見開く少女から逃げたくて、視線を外した。口元に笑みを刻む込む。
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